marriage ringはなくてもいい

灯生すずな

【Prologue】流星の向こうに


深夜

きみの場所もとまで

車を走らせる


今や高速道路の奥まった場所に差し掛かる

もう夜空よそらを邪魔する街明かりなんかなく

この時間は走る車も少なく見えた


向こうではきみが僕を待つ

彼方には燦々さんさんきらめく星たち


まるで僕らを見守ってくれている気がした


いや、そうでも思わないと

臆病な僕は、きみのもとまで

辿り着けるかと、不安で――


僕は車を走らせなが

長い年月としつきのきみとの電子メッセージを思い出す


僕はずっと――きみに選ばれたい、と願っていた

きみはずっと――


ふと、彼方で流星が駆けた

何かを祈る間もなく一瞬のこと


「綺麗だ」

それだけを思った

何かを祈りたかったとは思わず


きみが待っている

きみが僕を求めてくれている


ずっと願っていたんだ


今夜の夜空は殊更ことさら綺麗だ

僕は、車を走らせる



2017/08/30

revision 2019/04/19,20

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る