覚者探偵の我執

飛瀬川吉三郎

第1話探偵法のライト&ダーク


探偵は社会派であれ、元号を『探偵』にした政治家が言った言葉だ、この社会派というのは社会の腐敗を無くせ、とか、社会と折り合いをつけろという意味であった。


しかし、自称探偵達はキャオスであった。


何も戒めをせず、怪盗エルメシアを追い求める、ストーカーよりも、殺し屋よりも執着する。


探偵があらゆる事件に無理矢理介入できる事により、日本の人権ランキングはトップテンになった、最も探偵による人権侵害は国連ではカウントされない、探偵はアウトサイダーだと国際社会も認めた。


過激派フェミニストと揶揄される女流探偵も多数出てきた。


人権侵害は絶対悪と断じられて久しい。


それゆえに自称探偵は誰よりも人権を守ると同時に誰よりも人権を犯すクレイジー野郎になったのである。



菩薩いつみは集団強姦事件の被害者になり、世界に絶望した、この世が弱肉強食ということは男尊女卑が当然ということだ。


その姉、菩薩いつきが探偵を志すまで彼女にとって、徳がある善人ほど悪意に晒されやすいという現実が億劫になった。


探偵王アダム様ァンと出会うまでに、彼女は一人の探偵と出会っていた。


『雛僧探偵』百々目木谺どどめきこだま、彼は僧侶になったばかりの高校生だった、そして菩薩いつみの事件を暴いたら、それを仕出かした不良達をボコボコのギッタンギッタンのオラオラッ!したのである。


『雛僧探偵』百々目木谺はそのせいで停学になり、そのまま世間体を気にした校長のせいで停学になりダブり、その後、『凶漢探偵』尾羅月狼真おらつきろうまと闘い、更にダブった。


そのために、もう二十歳になるにも関わらず、まだまだ高校生現役であった。


いつも屋上にいる男、菩薩いつきはいつも彼に感謝していたため、高校一年になって、彼と同じ高校に入り、そして毎日のように屋上に通うのであった。


いつものように屋上に行ったらいつものようにその男はいた、辛子明太子、そして伝説の屑野郎愛用飲料水の日本酒パック、鬼殺し、彼はそれで昼から酒を飲んでた。


「あー!なんてことしてるんすか!」


菩薩いつきは叱った。


百々目木谺はそれを気にせず辛子明太子をしゃぶり酒を飲み、、中身を啜った後に言う。


「んー?晩酌」


「放課後で夕方なので晩酌じゃないですって!ていうかぶち殺しますよいい加減」


「お主は仏教徒なのに殺生をするのか?」


「あぁところで知ってます?司馬遼太郎の燃えよ剣では土方歳三が最初に殺すって言った時、武蔵国で強姦するの意味合いなんですよ!つまり私は逆レイプしたいって意味なんですね!」


「煩悩まみれかよ、お前処女ビッチ系ヒロインはやめた方がいいぞ?」


「いいえ!冗談ですって!ここでお前が煩悩に屈して私を犯していたらいつぞやの下衆野郎共と同じ扱いにして軽蔑してやろうと思いました!つまり探偵事件に合格したんですよ!」


「バカめ!!俺は既にやらはただ!」


やらはたとは、日本社会における性的観念のひとつ。「童貞や処女でいてもいい年齢」の表現で、「やらずにハタチ」(性行為の経験が一度もないまま二十歳になった)の略である。


同様の言葉で、「やらみそ」、「やらよそ」という言葉もある。これらは、「やらずに三十路」(性行為の経験が一度もないまま三十路の年齢になった)、「やらずに四十路」(性行為の経験が一度もないまま四十路の年齢になった)の略である。


「なら安心です!妹が恋した相手は妹とセックスするまで童貞でいて欲しいのです!」


「いや、妹セックス恐怖症になってないか?化物語の戦場ヶ原ひたぎみてーによ~」


とかいう彼に。


「む、難しい話題ですね、『暗殺探偵』瀬華宮拓爵せかみやたくしゃくは女性恐怖症を患っていますけど、妹は男性恐怖症になってますからねぇ」


「だろ?そういう異性に狂った事をやられたやつは体外出産で医者に卵子と精子を混ぜ交わせないと子供を産めないさ」


「なんで孕ませる事前提なんですか!」


「幸せな家庭を築くならいいだろ!?」


「そりゃーそうですけど………」


ちなみに菩薩いつきはセックスは保健体育の教科書でしか知らない、受精という事ぐらいしか知らない、体外出産が今言った説明が初耳である。


そう興奮している間に彼は鬼殺しを飲んだ。


「屑愛用飲料水を飲んでる場合じゃないっすよ!マジでぶち殺しますよ!?」


「ぶち殺すぶち殺すって物騒だなぁ」


「そりゃぁ妹の恋人になるような奴が鬼殺しを飲んでいたら殺意沸きますよ!沸きまくりのクリスタルキングっすよ!」


イッセンザットゥアリティーザッ ウェ………ピッ


「はいもしもし、『雛僧探偵』百々目木谺です、何?怪盗エルメシアが予告状を渋谷109の壁に書いただって?写メ送ってこい、じゃぁな、出来るだけオナ禁しとけよ」


ピッ


百々目木谺が突然のギター!に連なるノリノリのメロディが特徴で、以降のDN2ではザーラシエル登場時やバーなどで使われている曲を着メロにしていたそれを途中で切り、電話に出た。


「誰からっすか?」


「んー、ちょっとした情報屋だな」


「え!?誰ですか!?」


「秘密だよ、お前が探偵になっても教える気はない」


「そこは教えてくださいよ」


「駄目だ、アイツは女を見るとすぐ前屈みする変態なんだ」


「………………」


「いや、アイツは俺と同じ童貞だよ、別に何かしたって訳じゃねぇ」


「で、渋谷109に何が書かれてたんですか?」


ドンテショーッッツ ゲリーツェ メーーシェー……ピッ


「写メ来たな」


「何て書いてあるんですか?」


『今夜、Bunkamura Galleryのヒエロスムス・ボス展に展示されている絵画快楽の園を頂く、探偵諸君は怪盗を追い詰める快楽に身を委ねろ、ps私は非童貞にして非処女のバイセクシャルだ、私を追い詰めた挙げ句、煩悩に身を委ねても良いぞ?無理だがな(笑)』


「俺への挑戦状だな、『怪盗エルメシア』はこの世の全てを奪う、当然、童貞も処女もな」


「変態じゃないすか!?」


菩薩いつきは指摘した。


「変態であればあるほど何故か強くなるという事が西尾維新の法則にはあるからな」


「怪盗エルメシアもそうだと!?」


「そうだ、俺もアーッ!されそうになった」


菩薩いつきはドン引きした。


解脱から程遠い位置にいる存在、第六天魔王でもある怪盗エルメシア、いずれ自分がその存在を追い詰めれば………とまだ『雛僧探偵』の探偵助手でしかない彼女は思った。











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