Nora
鷹美
プロローグ
プロローグ 上
一面の銀世界の中に佇む大きな砦。
そこに向かう4つの人影があった。
茶色いパーカーとその上に防寒対策とカモフラージュを兼ねたフード付きの白いマントに全員が身を包んで進行している。
「砦まであと少しだ。
“ベル”、他の奴らの様子はどうだ?」
「問題なく、予定地点についたと思う。
風除けになったアレも今の所は異常が無いわ。」
先頭にいるリーダーの男は、後ろにいる男“ベル”に声をかけた。
ベルは、丸眼鏡をかけた黒髪の細身の男だ。
寒いのが苦手なのか、死んだ目をして震えながらリーダーの男に返事をする。
ベルの返事に耳を傾けた後は、辺りを見回し敵の姿や仲間が全員いることを確認すると再び砦の方向に視線を戻した。
砦に向かっているには、奴隷…いやこの場合はペットといったほうがいいだろう。
ペットとして囚われいる人間の救出。
とくに厄介なのは、子供を産ませて獣人の都合がいいように教育をされてしまうこと。
救いたい人間同士の争いはごめんだ。
リーダーも寒さを誤魔化すように後ろにいる仲間に声をかける。
「正直しんどい戦いになると思うが、外部から援軍が来る前に最速で済ませるぞ。」
リーダー格の男がそういった時に異変があった。
砦の方が何やら騒がしい。
こちらの進軍がバレたか?
「屈め。」
リーダーは素早くそして静かに仲間に指示をだす。
万全な状態で攻められたら、こちらが負ける。
状況を見て場合によっては撤退も視野にいれなければ…。
リーダーを含めて、全員が懐から双眼鏡を取り出す。
双眼鏡を見ると、全身に布を纏った人影を複数の獣人が追っていた。
こちらに気が付いた訳ではなさそうだ。
リーダーは、ホッと胸を撫でおろす。
「“アクト”、先頭は人間みたいだけどうする?」
「聞くまでもないだろ“シオ”、。
助けに行くぞ。」
リーダーの男“アクト”は、後ろにいた小柄なフードの女“シオ”にそう答えるとマントの中からカギ型の武器を取り出して一足先に走り出した。
武器は機械音を鳴らし、剣のような形に変わっていく。
“体の1段〔たいの1だん〕”
変形した剣から、赤い雷が発生してアクトの身を包む。
全身が雷に包まれると、アクトの走る速度がかなり早くなった。
シオの言った通り先頭はボロボロの布を纏った女だった。
見ての通り脱走を図ったようで、予想外の脱走に獣人たちが大慌てしているところか。
人間と獣人では身体能力の差はかなり大きく、女性は簡単に距離を詰められてしまった。
「ほら、捕まえたぞメス!」
獣人の1人が女を掴もうとしたが、纏っていたボロボロの布を獣人に投げつけて抵抗する。
目隠し奇襲にもなったようで再び獣人から距離をあけた。
しかし、獣人…それも戦いのプロである兵士に通用する訳もなく布を振り払った後に簡単に追いつくと肩を掴み地面に押さえ込まれてしまう。
「脱走なんて手間かけさせやがっテ。
来い、再教育してやル!」
なんとか砦に引っ張られる前に間に合った。
アクトはそう考えながら、女を抑え込んでいる獣人の首を切り裂く。
白いマントでカモフラージュしながら進んだ成果で獣人からは突然現れるようにも見えただろう。
他の獣人は警戒するように立ち止まって各々武器を構えている。
アクトは、取り押さえていた獣人の死体を女から剥ぎ取ると自分の纏っていたマントを女に被せる。
被せたマントの下は全裸のようで手足なんて真っ赤に霜焼けしていた。
可哀想に…。
握っている剣の柄に力が入る。
剣の先端と視線を獣人に向けたアクトは口を開く。
「教育なんて随分な事を言ってくれるな。
上等だ、見せてもらおうか”獣(けもの)”共!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます