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第1話 愛しかいらない

 からかいながら、貴方が差し出した赤いバラ。私は笑い、にわかに木々は輝きだした。


 しかし貴方はしがらみに絡まり、錆びた針が確かに何かに刺さり、灰になり居ない……今。


 来た道が轍になり、先長い未来に期待した私。


 秋に聞いた話がまだわだかまり、悲しみに泣いた日が固まり、汚い死骸みたい。


 私には何かが足りないかしら?

 足りないからと……走り出したら厳しい坂道。腹が立ち、吐き出した。


 分かち合いたい。花が咲き、花火みたいに輝いた日々。語り出した話には貴方しかいない。



 貴方に会いに、今行きたい。


 抱き合い重なり交わりながら愛した日々が痛みに変わり、長い長い闇に泣き出した、芝居じみた私。


 だから、だから……いや、まだ行かない。貴方は死に、居ないから。私はまだ生きたい。四季はまわり、鮮やかな色彩に逆らいながら、生きた証刻み、闇が去り、西に光が射したら涙は乾き、轍には花が咲いた。



 だからまだ貴方には会いに行かない。

 再会はまだ先。


 





 

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