第28話 俺は強いよ
ニュースが煩い! 皆さまお揃いでテレビのボリュームが大きくないか?
〝ご覧ください、国防軍本部基地が襲撃され戦闘機と戦車が無残な姿になっています! 巨大生物は古代大型哺乳類を模したロボット兵器と判明し国防軍が四体破壊しました。現在東駐屯地から出動した戦闘機四機が追撃していますが六体は西方面に侵攻中です!〟
〝近年我が国は軍事を縮小していましたから……〟
ソファーに転がったまま聞いていたらオメガを抱いた仙香が寄って来た。仙香の手を離れ抱っこと手を伸ばすオメガを起き上がって膝に乗せた。
「国防軍がもうやられてしまいましたねぇ。このままでは国民に被害が及びます」
「皆はどうでもいいんじゃなかったの? まだ東駐屯地と南駐屯地があるでしょ」
仙香に返答をしたら昴も寄って来た。
「俺が捻くれた事を言って悪かったよ。黙って見てられないよ」
「昴を踏みにじり疎む人などいなくなってしまえば良いよね?」
「そう思ってたよ。でも違うんだろ、これからなんだろ?」
〝戦闘機が叩き落されました! ミサイルも全く効果がありません。これでは国防軍は成す術を……〟
オメガの硬い髪をクシャクシャと撫でる。リゲルまで寄って来た。
「香子様、私も驕っておりました。申し訳ありませんでした」
百香部隊は戦闘服を着て準備万端。この時代の百香は国王に虐げられて使命を捨てたのかと思ったらそうでもないらしい。
オメガが何か言いたそうに俺を見上げた。なに?
「お待ちください。コウ君、国防軍からお電話ですよ」
オメガの返事を聞く前にミラーがスマホを差し出した。
「代わった。なにか用?」
「国防軍長官の泉です。国王が国外に脱出しました。宮廷を落とされる訳にはいきませんので侵入者の制圧に百香様の協力を求めます」
「国王逃亡の報道はされてないよ」
「混乱を招きますので報道は控えさせて頂きます」
電話を切りミラーに返す。
不安そうな顔で黙って成り行きを見ていたシオンを呼んで頭を抱え込んだら髪をさらさらと指で梳かす、ベンケイソウ、コスモス、ネリネ、ノボタン、ハツコイソウ、ビデンス、ブバルディア、ゲッキツ、サフラン……再度スマホが鳴った。
「お待ちください。国防軍からです」
「なに?」
「泉です。先程の件ですが今から報道されます。ご確認ください」
途端にテレビでニュースキャスターが喋る。
〝速報です。二連ポイズ国王が国外脱出したと発表されました。えーっ、国防軍・泉長官の発表です。国防軍及び各国家機関は慣例に従い香子三世様の命に従うとの声明を出しました。解説は元宮廷士官長・羅津さんに御越し頂いています〟
〝ポイズ国王は二連家の養子ですから逃亡となれば破門でしょう〟
〝羅津さん、シリウス王子は行方不明では無かったですか?〟
〝そうですね。香子三世様が実在されるのならシリウス王子のお子様の可能性が高いです〟
〝宮廷は混乱している事でしょうね。待って下さい……新たな情報です! 香子三世様は香人キング虹彩京さんだそうです。驚きの情報が入り……〟
子供に丸投げか。お偉い方々は責任回避が上手い。
「泉長官、引き受けるよ。今から居住地帯は閉鎖する。大至急、空港は離発着禁止、各交通機関は不通を徹底して。動くのは消防と救急だけ。後の指示はミラーがする」
ミラーにスマホを渡しオメガの髪をクシャクシャと撫で準備万端の皆様に指示を出す。
「日登はここでミラーと連絡調整及び残った人の保護。仙香はあきらと修一、プロキオンとサラセニアと共に宮廷内の統制と囚われている香蜜人の保護。リゲルと昴はドーム内に入ったメカ恐竜の制圧。シオンはここで繚乱に指示を。昴、敵の出現先と本拠地の映像」
壁に映し出された映像には生い茂る木立の中に蠢く物が無数にいる。昴が言う。
「東星山から東に二百kmの森林からメカ恐竜が出現してる。本拠地も同じだ。コウ君、居住地帯閉鎖ってどうするの?」
「これから俺は国にドームを張ってドーム外のメカを処理後本拠地に向かう。以上散開」
「国にドーム張るの?」
「昴、メカ恐竜はまだ増えるし攻撃されればドームも破損する可能性がある。ボケッとするな! まずは西の端だ。宮廷までは修一がジェットカーで送ってくれるから後は全力で走れ! ふふ。シオン、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
眼にいっぱい溜めた涙を零す必要はない、俺は強い。
オッドアイにオメガを乗せ硬い髪をクシャクシャ撫でる。いい子に待ってろ。
オッドアイの被毛をギュッと握りオメガが頷いた。
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中央にある自然公園の天辺に支柱を建て各ブロックの十区を除いた居住エリアの中央と三十六区を囲う。国の略中央にあるここは小山を丸ごと自然公園にしているから頑丈な支柱を建てられる。
国土が六十万平方kmその内居住区が五十二万平方km。俺がマックスで気香を張るスピードが毎秒八十五km、光速度には程遠いけど十分足らずで閉鎖完了だ。
上手くいったかな? ふっ、昴みたいに見えたら便利なのに。
ドーム上を西に飛ぶとメカ恐竜三体が見えた。
ティタノサウルス、デカい。背中に突起のあるアグスティニア、ブラキオサウルス、行進をドームに阻まれ怒っていらっしゃる。
本物なら草食で大人しい筈でしょ? 三体は中に入ったけどきっと小型。
試しに顔面目掛けて香砲弾を打つ。
〝ドッカァーン!〟
煙が出たけど〝ギャー〟と余計に怒っただけで効いている気配無し。固い。
玉より刃でしょ。大剣を作り長い首を躱して切り込む。うわぁあ! 古代生物が火を噴いたら反則。翼がちょっと燃えたでしょ!
ドーム上に降りて踏ん張り気香を乗せ大剣を振るう。スパッ!
三体の首が飛んで爆発炎上。火の粉、熱!
気香を放ち有形化して消火! 俺って優秀。
あらら、山が変形してる……後で叱られるかも。
日登の声が頭の中で響く。
〝北から後続が十体侵入し西に向かって進攻。昴君とリゲル君がドーム内で苦戦〟
人が通れる出入り口を作りドームに入るとガリガリとしたデイノニクスが倒れ八mはあるティラノサウルスがリゲルを睨む。
五m程のメガロサウルスが昴と戦っていた。
おー! スピカが弓を弾いているじゃないか。俺もやってみよぅ!
スピカの横で弓と矢を作りティラノサウルス目掛けて弾く。あっ、逸れた。矢はリゲルの髪を掠め向こう側の倉庫らしき建物を大破させた。
リゲルが振返る。
「香子様は私を殺すおつもりですか!」
「滅相もない。ふふ」
弓と矢をスピカに渡し食べられてしまいそうな昴を加勢する。
大口を開けたメガロサウルスの顔に飛び蹴りし〝ギャー〟と怒られながら短剣で戦う昴に言う。
「俺のフルーツナイフは戦闘用じゃないよ」
「気に入ってるんだよ! 剣が折れたの!」
大剣を作って昴に渡す。
昴はニヤリと笑って一振りでメガロサウルスを切裂いた。お見事!
もう一本大剣を作り投げる。「リゲル!」リゲルも剣を受け取ると一振りでティラノサウルスを切裂いた。
爆発で周辺の建物がやられたけど俺が剣を振ったらもっと大惨事になる。消防が出動してるから何とかなるでしょ。繁々と大剣を見てリゲルが言う。
「良い剣ですね。頂いてもいいですか?」
「勿論。リゲル、西の十体をお願い」
〝上空に三体、東に五体、北に五体侵攻〟
日登の声が頭に響き昴を引っ掴んでドーム上に出たら中央で止まり滑り台を東に伸ばして昴を放り投げる。
「東の五体を頼んだよ」
「コウ君なんて嫌いだーーー、わぁーーーぁーーー」
ははは、昴は一々『わぁーわぁー』喚いて面白い。居た。
上空を飛ぶ翼竜の顔目掛けてパチパチパチッと指を弾く。
付いて来い!
三体を煽り北の空に飛んだらいいもの見た。
地響きをさせ国防軍本部基地でメカ恐竜五体が遊んでる。はは、ぶっ壊せ!
百香を隔離する施設も検査室も要らない。頑丈な隔離施設が残ってるじゃないか……手伝う? メカ恐竜諸共超大剣で叩き斬る。
ははは、核爆弾より俺の太刀のほうが強烈爆裂! 誰も居ない国防軍本部は跡形もなく消えた。ご愁傷様。
上空高く逃げて行った翼竜を追って舞い上がりまた煽って東の空高く飛ぶ。
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