第46話

 正直俺は疲れていた。

 もう夜中の二時だし……。


「はぁ……疲れた……」


「もう何疲れてるんですか! まだまだ若いのに!」


「愛実ちゃんが元気過ぎるんだよ……」


 俺達はそんな話ししながら、脱衣所に到着し、服を脱いで風呂に入る準備をする。


「次郎さん、次郎さん」


「何?」


「脱がせてあげましょうか?」


「なんでだよ……自分で脱いでくれ」


「いや、さっき私が自分で服脱いじゃったし……次郎さんも脱がしてみたいかなーって」


「そんな気遣いはいらん」


 俺はそう言ってタオルを巻いて脱衣所を後にし、風呂場に向かった。


「はぁ……やっちまったなぁ……」


 まさかこんな事になるなんて、俺はすこしも思って居なかった。

 しかし、後悔は無い。

 何かあれば責任をとる覚悟もあった。

 それに……愛実ちゃんを不安にさせるのが俺は嫌だった。


「次郎さん!」


「ん? 何?」


 少しして愛実ちゃんも風呂場に入ってきた。 二人しか居ないお風呂場で、俺と愛実ちゃんは並んでお風呂に浸かり、窓から見える綺麗な月を見ていた。


「なんでこっちを見ようとしないんですか? さっき散々見たのに……」


「そう言うことじゃないだろ……はぁ……少しは恥ずかしいとか思わないの?」


「うーん……なんか嬉しすぎて、興奮しちゃって……」


「あっそ……すっかりいつもの調子にもどってるし……」


「私の明るいところが好きって言ったくせに」


「うっ……ま、まぁ……さっきの塩らしい態度よりは良いけど……」


「えへへ~次郎さんのエッチィ~」


「愛実ちゃんだけには言われたくない」


 愛実ちゃんはそんな事を言いながら、俺の腕に抱きついてきた。

 もう夜中の二時でいつもなら眠たいはずなのに、俺は興奮しているのか、まったく眠くなかった。


「愛実ちゃん……」


「はい?」


「俺で良かったの? その……初めてだったでしょ?」


「はい……てか、次郎さんもどうて……」


「それ以上言わないでくれ……」


 そうだよ、俺も初めてだよ!

 何か文句あるか!


「もう、そんな照れること無いのにぃ~」


「はぁ……もうその話しはやめよう……それよりも……多分俺朝起きれないぞ……どうしてくれるんだよ」


「えへへ~、じゃあまた体でお詫びします」


「やめろ」


「イテッ……でも……今日は許します」


 俺が愛実ちゃんにチョップをすると、愛実ちゃんは嬉しそうな表情で俺の腕に再び抱きついて来る。


「いやぁ~玲佳さんにはお礼を言わないとなぁ……」


「ん? 玲佳さん?」


「はい、実は玲佳さんにアドバイスをいただきまして! 男は女が裸で泣いてる姿に弱いって! 罪悪感が増すそうですよ」


「計画的犯行!? じゃああの涙は……」


「ほ、本当に悲しかった……ですよ?」


「じゃあ、俺の目を見て言え……」


 愛実ちゃんは思いっきり俺から目を反らしてそう言った。

 まさか、一連の流れがすべて計画されたものだったとは……。

 なんか騙された気分……。


「はぁ……俺は本気で心配したのに……」


「え、なんですか!? そんなに弱音を吐く私が心配でした?」


「う・る・さ・い」


「イテテテテテ!! しゅ……しゅびばしぇん……」


 俺はからかってくる愛実ちゃんの両頬を持って引っ張る。


「うぅ……可愛い顔が台無し……」


「自分で言うな」


「でも、可愛いと思ってるくせに……」


「う、うるせぇ!」


「さっきだって、ずっと耳元で……」


「だからそれを言うな!!」


「イテッ!! もう、そんなにポンポン叩かないで下さい!! 馬鹿になるじゃないですか!!」


「いや、君はある一定の事に関しては既に馬鹿だよ」


 俺たちは三十分ほどお風呂に入り、部屋に戻った。

 再び布団に入った時には夜中の三時近かった。

 

「じゃあ、改めて……おやすみ」


「はい……おやすみなさい……」


 俺と愛実ちゃんはそう言って一つの布団に二人で寝た。





 翌朝、俺の調子は凄く悪かった。

 体はだるいし、寝不足で欠伸が止まらない。 

「ふあ~あ」


「次郎さんまた欠伸ですか?」


「あぁ、あんまり寝てないし……そう言う愛実ちゃんは眠くないの?」


「私は全然大丈夫です!」


 高校生と大学生の差ってこういうところで出てくるのかな?

 俺と愛実ちゃんはそんな事を考えながら、布団から起き上がり、朝食が来る前に朝風呂に向かった。


「じゃあ、また後で」


「おう、じゃあな」


 俺と愛実ちゃんは風呂場で別れ、俺は男湯に入っていく。


「あ、高井さん」


「ん? おう次郎、なんだお前も朝風呂か?」


「えぇ、まぁ……」


「そうか、それにしてもお前……なんか疲れてないか?」


「えっと……まぁ、夜中色々あって……」


「あぁ……なるほどな……」


 高井さんは俺の顔を見てニヤニヤと笑っていた。

 またなんだか面倒な事になりそうだ……。

 服を脱ぎ、俺と高井さんは風呂に浸かる。

 朝なので人も居なくて、ゆっくり出来た。


「んで……やったの?」


「なにをですか?」


「愛実ちゃんとだよ? どうだった? 女子高生は?」


「やめて下さいよ、言い方が親父臭い……」


「なんだよ! お前達が上手くいったのは、俺のおかげと言っても過言じゃないんだぞ」


「過言です」

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