初デート
第32話
*
「次郎さん」
「なんだ?」
「初デートをしましょう」
「は?」
部屋に遊びに来ていた愛実ちゃんが急にそう言い出した。
俺は食事を作る手を止め、愛実ちゃんの方を向いて尋ねる。
「急にどうした?」
もう付き合って二週間が経過しようとしていた。
そう言えばデートらしいデートを付き合い始めてからしていない気がする。
「だって、付き合い始めて、もう二週間なのに……いまだにデートらしいデートをしてないじゃ無いですか」
「まぁ……そうだな……」
「一緒に夕飯の買い出しはありますけど……ちゃんとデートしたいです」
頬を膨らませながらそう言う愛実ちゃん。
まぁ、確かに付き合ってからはなんか一段落付いた感じで何もしてないしな……。
安岡も毎週デートしてるっぽいし、デートくらい連れて行かないとな……。
「よし、じゃあ行くか」
「本当ですか? わーい!」
「んで、どこに行きたい?」
「えっと……買い物とか、映画も良いですね! あ、最近駅前に出来たケーキバイキングのお店も行きたいです!!」
「なるほど……じゃあいつ行く?」
「次の土曜日が良いです!!」
「あぁ、良いよ」
「わーい! 楽しみにしてますね!」
嬉しそうにそう言いながら、愛実ちゃんは俺のベッドの上に寝っ転がり、スマホを操作し始める。
すっかり俺のベッドが定位置になってしまった愛実ちゃん。
時々、枕に顔を埋めて匂いを嗅いでいるのが気になるが……まぁ良いか。
「ほら、飯出来たぞ」
「わーい! いやぁ~次郎さんすみません。今日は家の両親どっちも居なくてぇ~」
「だからって……俺の家に泊まるなよ」
「もう! 本当は可愛い彼女が泊まりに来て嬉しいくせに!」
「あぁ……面倒くせぇ……」
まぁでも……一人で飯を食べるよりは良いか……。
俺は口には出さないが、付き合って二週間が経ち、段々と愛実ちゃんと一緒で居ることが嬉しいと実感し始めていた。
逆に愛実ちゃんが家に帰ると少し寂しかったりする。
「次郎さん、相変わらず料理上手ですねぇ~」
「ありがとよ」
ニコニコしながら、俺の料理を頬張る愛実ちゃんを見て、俺は悔しいことに実感していた。
俺は愛実ちゃんを好きになり始めていると言うことに……。
「ん? 次郎さんどうしたんですか?」
「え?」
「いや、ずっと私を見ているので……」
「あぁ……よく食べるなぁ……ってな」
「あ! 今少し馬鹿にしました!? 別に私は食いしん坊じゃ無いですぅ!!」
「はいはい、分かったから早く食えよ」
「もう!!」
俺はそう言いながら、自分も晩飯に口をつける。
そっか……飯って誰かと食うと……美味かったんだな……。
*
デート当日。
愛実ちゃんと駅前で待ち合わせをしていた。 しかし、愛実ちゃんは約束の時間になっても待ち合わせ場所に来ない。
どうしたのだろうか?
俺がそんな心配をしていると、急に俺の視界が暗くなった。
「だ~れだ?」
「……愛実ちゃん?」
「おぉ~!! 次郎さん正解です! 正解のご褒美に私をプレゼントしま~す!」
愛実ちゃんはそう言いながら、両手を広げてハグを求めてくる。
しかし、俺はそんな愛実ちゃんをスルーしてスマホを見ながら話す。
「映画の上映時間まで時間あるし、どこか喫茶店にでも入ろうか」
「あれ? スルーですか!?」
「良いから行くぞー」
「あ、待って下さいよ!!」
「あ、そう言えば……」
「え? 何ですか?」
「……可愛いじゃん」
「ふぇっ!?」
俺は立ち止まって、愛実ちゃんの服を褒める。
安岡が言っていた、デートの最初は、まず彼女の服を褒めることらしい。
「きゅ、急になんですか!!」
「なんだよ、褒めたのに」
「う、嬉しいですけど……ふ、不意打ちは卑怯です!!」
「卑怯って……」
多分、成功? したのだろうか?
まぁ、愛実ちゃんは元が可愛いしな……。
駅前の人たちも愛実ちゃんを見てたし。
「この先に良い店があるんだよ」
「へぇー良く知ってますね」
「まぁ……カフェ巡りとか好きだからな……」
「女子みたいな趣味持ってるんですね」
「うっせ! 良いだろう別に……そこのコーヒーが好きなんだよ。静かで落ち着いてて」
俺はそんな事を言いながら、愛実ちゃんを連れて喫茶店に向かう。
「いらっしゃいませ」
喫茶店に到着し、俺たちは映画の時間まで時間を潰すことにした。
「何にする?」
「えっと……じゃあホットココアで」
「じゃあ、俺はコーヒーにするかな」
注文を終え、俺たちは飲み物を飲みながら、今日一日の予定を話していた。
「映画に行った後は買い物、その後はケーキバイキングだな」
「あ! そう言えばケーキバイキングって完全予約制なんです……」
「あぁ、知ってる。俺が予約しておいた」
「え!? 本当ですか!」
「あぁ、まぁね……」
実は久しぶりの女子とのデートと言うことで、俺はかなり入念に準備をしていたのだ。
ケーキバイキングの事も映画の上映時間前の時間潰しの場所も全部事前に用意していたのだ。
「ありがとうございます!! 私、今日の朝気がついて焦っちゃいました……」
「まぁ……一応な……」
良かった、事前にサイト見ておいて……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます