第24話
*
「愛実ちゃん」
「はい? どうかしました?」
「いや……あの……この前の話なんだけど……」
「あぁ、優美の事ですか?」
「うん、あのさ……ちゃんと言ってくれた?」
「はい! 諦めるなって言いました!!」
おっと………この子がおかしいのか?
それとも俺がおかしいのか?
「えっと……俺は確か、諦めるように言ってくれて言ったよね?」
「いや……でも話しを聞いてるうちに同情しちゃって……」
まぁ、そりゃあそうだよな……友達だし、やってることも似てるしな……。
「いや、マジで友達困っててさ」
「でも、優美ってかなり可愛いですよ?」
「いや、そう言う事じゃなくて」
「あ、写真見ます?」
「いや、だから……え! 何この子!? 本当に高校生?」
愛実ちゃんから見せられた写真に、俺は思わず驚いてしまった。
長いロングヘアーを右側でくくっており、優しい笑みを浮かべながらこちらを見ていた。 大人っぽい女の子で胸も結構大きかった。
てかあいつ……この子の何が不満なんだ?
「まさかこんな美少女なんて……」
「私とどっちが可愛いですか?」
「この子……いてっ!!」
「次郎さんの馬鹿!」
「いきなり蹴らないでよ……」
「しりません!」
少し怒らせてしまった。
何も蹴ること無いのに……。
しかし、どうしたものだろうか。
愛実ちゃんがあちら側に回ってしまった以上、俺には何も出来ないぞ。
でも、こんな可愛い子に迫られてるなんて羨ましいけどなぁ……。
「愛実ちゃん、バイト終わったらちょっとこの話の続きしよ」
「え! デートですか!!」
「違う」
「ぶー」
「膨れないの」
俺は愛実ちゃんにそう言い、仕事に戻った。 仕事が終了したのはそれから二時間後だった。
俺は愛実ちゃんが着替え終わるのを待っていた。
「次郎さん、お待たせしました!!」
「おう、じゃあ行こうか」
「はい!」
二人でバイト先を出て、ファミレスにやってきた。
平日の夜でもなかなかに混んでおり、席の空席はあまりなかった。
「んで、話しなんだけど……」
「はい、次のデートの話しですね!」
「そんな話しは一度もしていない」
「えーじゃん何の話しですかー」
「急につまらなそうな顔をしない」
互いに注文をした後、俺は愛実ちゃんに話し始めた。
「まぁ、あの子も安岡の事が好きなのだろうけど……安岡自身は彼女の事をなんとも思ってないらしいし、むしろ困っているわけだから、どうにか諦めるように言って貰えないか?」
「そう言われても……なんか私あの子の気持ちがわかるんです……」
そりゃあそうだろうなぁ……だって今の俺たちと同じような関係だし。
そう言う俺も安岡の気持ちは良く分かるんだけど……。
「まぁ、そうだけどさ……少しやり過ぎな部分もあるじゃん? ちょっと抑えるように言ってくれても……」
「何を言ってるんですか! 恋はいつでも当たって砕けろです!」
「君の場合は当たっても進み続けてるけどね」
「奥手だと他の女に横取りさちゃいます!」
「なるほど、愛実ちゃんはその娘に同じ事を言ったんだね」
「はい! 私の恋の方程式です!」
胸を張ってそう言う愛実ちゃんを見ながら、俺は深くため息を吐いた。
何が恋の方程式だ。
ガバガバにも程がある……。
「逆に次郎さんに聞いてきて欲しいです」
「何を?」
「優美のどこが嫌なのか、優美の好きな人にです」
「え?」
*
「なぁ安岡」
「何?」
「お前って片桐ってこのどこが嫌なの?」
「いきなり何?」
愛実ちゃんとファミレスで話しをした翌日、俺は安岡に愛実ちゃんから言われた事を尋ねてみた。
「いや……どこがって言われても……そもそも嫌いなところが有るから付き合えないわけじゃないし」
「まぁ……そうだよな……」
俺も同じように聞かれたら、そう答えるだろうしな。
「写真見たけど、可愛い子だったじゃないか、なんで付き合わないんだ?」
「いや……好きでも無い子とお前は付き合いたいと思うか?」
「まぁ、確かにそれはそうだが……」
「だろう?」
安岡の言っていることに、俺は凄く納得出来た。
自分も同じような考えだからだ。
だから俺は安岡には何もアドバイスが出来なかった。
「はぁ……ハッキリ言った方が言ったのになぁ……」
「付き合えないってか?」
「うん……でもあの子はそんな言葉耳に入ってないみたいで……なんて言うか……猪突猛進っていうか……」
あぁ、凄く分かる……。
愛実ちゃんもそんな感じだからなぁ……。
それにしても最近の女子高生はどうなってんだか……。
「あの子……メチャクチャ可愛かったろ?」
「え? まぁ……いきなりなんだよ」
「いや……可愛いとは俺も思ってるんだよ……でも……なんでか俺は彼女と付き合いたいとか、そう言う感情を抱けないんだよなぁ……」
喫茶店のテーブルで、安岡はアイスコーヒーを飲みながら話し始めた。
「なんでだろうな……」
安岡の話しに、俺は思わずそんな言葉がでた。
「スタイルも良いし、バイト先でも彼女は人気なんだよ……」
「そうなんだよなぁ……」
「なんで俺なんか……」
「そうだよなぁ……他にもイイ男は居るのになぁ……」
「お前さっきから失礼だろ!!」
「あ、悪い、つい……」
「ついってなんだよ!!」
安岡の話しを聞いていると、自分の話しを聞いているようで、思わず同調するような発言ばかりしてしまう。
安岡はこれからどうするんだろう?
「んで、安岡はこれからどうするんだ?」
「どうって……いままで通り断り続けるしか無いでしょ」
「考えるとかしないのか?」
「考える? 付き合うかどうかをってこと?」
「あぁ……」
俺はその道を選んだけど、こいつは一体どうするのだろうか?
「………多分、俺は断り続けるよ」
「なんでだ?」
「いや、これだけ思ってくれてる事は嬉しいけど……俺は多分彼女とは付き合わないよ」
「そうなのか?」
「うん……あの子は……俺にはもったいないし……諦めるまで根気よくかな……」
「……そう言う選択もあるのか………」
俺はそんな事を思いながら、アイスコーヒーを飲み干す。
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