第15話
家に帰ってきた俺と愛実ちゃんは、買ってきた物を冷蔵庫の中に入れて料理に準備をしていた。
「次郎さんは座ってて下さいよ」
「いや、愛実ちゃんが何を作るか分かってもんじゃないからな、見張りついでに手伝うよ」
「普通にグラタンを作るだけですよ?」
「じゃあその手に持った赤マムシドリンクはなんだ?」
俺は愛実ちゃんの手から赤マムシドリンクを取り上げる。
こんなの飲んだら本当に愛実ちゃんを襲い掛けないしな……絶対に料理の中には入れさせないようにしないと……。
「次郎さん、それ切って下さい」
「はいよ」
なんだかんだ言いつつも調理は普通だった。 包丁を持っている愛実ちゃんなんて、中々見る機会が無いので、なんだか新鮮だ。
「へー、本当に料理出来るんだ……」
「それ、どう言う意味ですか?」
「いや、最近の女子高生にしてはしっかりしてるなって……」
「そりゃあ、女子ですもん! 料理くらい出来ないと!」
そう言って胸を張る愛実ちゃん。
まぁ確かに、俺も結婚するなら料理が出来る人の方が良い。
「それに、次郎さんの胃袋を落とせれば、次郎さんも落ちるじゃないですか」
「そんな簡単に俺の胃袋も俺も落ちないよ」
この子はどんだけ俺の事が好きなのだろうか?
一体切っ掛けはなんだったのだろう?
女の子からこんなにも好意を向けられた事が無い俺にとってはなにがなんだか分からなかった。
「よし! それじゃあ食べましょうか!」
「ん? あ、あぁ……」
考え事をしているうちに食事は完成した。
メニューはグラタンとサラダ、そしてスープだ。
俺も手伝いはしたが、ほとんど愛実ちゃんが一人で作ったものだ。
「美味そうだな」
「美味しいですよ! ささ! 早く食べて下さい!」
「お、おう……」
俺はまずグラタンに手を付ける。
スプーンでグラタンをすくい、口の中にグラタンを入れる。
驚いたことに普通に美味しい。
勝手に見てくれは良くても、味はとんでも無い味なんじゃ無いかと思っていたが……意外に普通だ。
「普通に美味しいな……驚いた」
「なんで驚くんですか?」
「いや、なんかイメージがね……美味しいよ」
「それは良かったです、惚れました?」
「簡単に胃袋は掴ませないよ」
「っち……」
「舌打ちやめい」
俺と愛実ちゃんは食事を終え、二人で食器を類などを洗いテレビを見ていた。
そこで俺にとっては最大とも言えるイベントがやってきてしまった。
それは……。
「次郎さん!」
「なんだ?」
「一緒にお風呂に入りましょう!!」
「寝言は寝て言え」
「あうっ! い、痛いです……」
そう、お風呂だ。
うちの風呂場はそんなに広くは無いし、脱衣所なんて無い。
何せ安アパートだし……。
もちろん俺は、愛実ちゃんのお風呂なんて覗く気はさらさら無いし、一緒に入るつもりも毛頭無い。
しかし、違う心配が俺にはあった。
「じゃあ、お風呂沸いたから愛実ちゃん入ってきて良いよ」
「そんなの悪いですよ、次郎さん先にどうぞ! そしてベッドの上で待っていて下さい」
「またねーよ」
「むー、なんでですか!」
「待つ必要がないからだ」
「次郎さんは毎回そうやって照れる~……良いんですよ? 私の入浴シーンを覗いても……バレていても私は気がつかない振りをしてあげまうすから~」
「覗かねーよ……はぁ……良いから先に入ってきなよ、一応お客さんだし」
「はっ! そっか! さては次郎さん、私が入った後のお湯を飲むつもりですね!! 流石レベルが高い!」
「先に入ってくる」
そんな変態みたいな真似するか!!
俺はさっさと自分の着替えを持って廊下に出た。
風呂はキッチンの横にある。
廊下で衣服を脱ぎ、いつもはお風呂場に入っているのだが、今日は色々と警戒しながら脱衣をしなくてはいけないようで……。
「愛実ちゃん」
「なんですか?」
「なんで堂々とドアの隙間から覗いてるの?」
「お気になさらず、後で私の脱衣も覗いて良いので……」
「気にするわ!」
ドアの隙間から俺の脱衣を覗いていた愛実ちゃん。
俺はドアをしっかりと閉め、注意しながら服を脱いでお風呂に入った。
「ふぅー……極楽、極楽……」
湯船に浸かり、俺は天井を見上げる。
昨日は愛実ちゃんに告白されて驚き、今日は愛実ちゃんと一日一緒で……なんだか濃い一日だったなぁ……。
愛実ちゃんが料理出来るなんて知らなかったし、若干エロいし……。
「はぁ……俺を落とすって……あれだけ積極的に来られてもなぁ……」
告白される前までは、愛実ちゃんは可愛くて仕事の出来る良い子だと思っていたのだが……この二日間で彼女の印象が大きく変わってしまった。
俺の事をからかっているのか、それとも本気なのか、誘惑まがいのことをしてくるし、隙あらば抱きついてきたり、キスしようとしてきたり……。
「はぁ……なんで俺なんだ……」
俺が何かしただろうか?
そんな事を考えながら、俺は風呂から上がった。
「上がったよー………何してんの?」
「お気になさらず……」
「いや、気にするわ」
俺が風呂から上がると、愛実ちゃんが俺のベッドの上でうつ伏せになってゴロゴロしていた。
「だって、このベッド次郎さんの匂いがするんですもん!」
「そりゃあ俺のベッドだからな! 良いからさっさと風呂入ってこい!」
「わかりました、じゃあ今度は次郎さんが入った後のお風呂に入ってきます」
「なんで俺が入ったってとこを強調するんだ……」
愛実ちゃんはそう言って、廊下の方に着替えを持って出ていった。
考えて見れば、家のお風呂に女の子が入るのは始めてのことだ。
扉の向こうで女子高生の女の子が服を脱いでいると思うと、なんだかドキドキしてしまう。
「次郎さーん! 覗かないんですかぁ?」
「覗かねーよ!」
「今日の私の下着凄いんですよぉー!」
「知るか!!」
凄いって……何が凄いのだろうか?
気にならないと言ったら嘘になるが、覗きに行った瞬間、俺の中の理性が吹っ飛んで粋そうなので、俺は大人しくテレビを見ていた。
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