第6話
*
なんかしらないが、高井さんが俺に変な質問をしてきたのだが、一体どうしたのだろうか?
「まぁ、あの人が変なのはいつものことか……」
俺はそんな事を考えながら、厨房の奥で野菜を切っていた。
「お、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
野菜を切っていると、愛実ちゃんが厨房に入ってきた。
今からのシフトは愛実ちゃんと高井さん、そして俺か……なんか疲れそうだな……。
「愛実ちゃんはいつも通りレジをお願い、俺は厨房するから」
「は、はい……わかりました……」
どうしたのだろうか?
最近はシフトに入った瞬間から、俺にうざ絡みしてくるのに……今日はそれが無い。
というか、さっき高井さんが変なことを言うから、変な想像をしてまう
絶対に有り得ないことなんだけどな……。
「次郎さん、あの……」
「ん? 何?」
「く、クリスマスって……その……シフトの後は暇ですか?」
「え? まぁ……家に帰ってテレビ見て寝るだけだけど?」
自分で言ってて寂しくなってくるなぁ……。
我ながら可愛そうなクリスマスを過ごす予定で居る気がする。
「あ、あの……よ、良かったら……ご飯でも行きません?」
「え?」
なんで愛実ちゃんがクリスマスの日に俺を食事に誘うんだ?
俺は少し考えて、愛実ちゃんに答える。
「嫌だよ、どうせ俺のおごりなんだろ?」
どうせいつもの冗談だろう。
俺はそう思って、いつも通りの返事を愛実ちゃんに返す。
どうせ、良いよなんて言ったら「期待してるんですか?」とか言われてからかわれるだけだし……。
「そ、そうですか……あはは、ごめんなさい! いつもの冗談でした-!」
「あのなぁ……歳上をからかうのも……」
ため息を吐きながら言葉を続けようとした俺だったが、そこで言葉を止めた。
その理由は、愛実ちゃんの笑顔がいつもの笑顔とは違っていたからだ。
なんて言ったら良いのだろうか……表情は笑顔なのに、目は悲しそうだった。
「じゃ、じゃあ! 私は今日もお仕事頑張りまーす!!」
「あ、あぁ……」
愛実ちゃんはそう言って、俺の前から居なくなった。 なんなのだろう……この胸に突き刺さるような違和感は……。
*
はぁ……私はため息を吐きながら更衣室で着替えをしていた。
勇気を出して次郎さんをクリスマスに食事に誘ってみたのだが、日頃の私の言動は原因で断られてしまった。
「はぁ……ついてないなぁ……」
こんな事なら、日頃からあんな態度を取らなきゃよかった。
私はそう思いながら、家に帰ってシャワーを浴び、夕食を食べる。
「はぁ……」
結局ベッドに入るまで、私はずっとため息を吐いていた。
最近こんなにショックなことはあっただろうかと言うほど、私はショックを受けていた。
スマホの画面を操作し、次郎さんの連絡先を開く。
こんな時だからだろうか、愛しい人の声が聞きたいと私は感じてしまった。
「う~……う~」
私は通話ボタンを押そうか押すまいかを悩みながら、私はベッドの上でゴロゴロと転げ回る。
*
「あっつ!」
フライパンの油が跳ねて腕についてしまった。
バイトから帰宅し、俺は夕飯の準備をしていた。
たまには唐揚げが食べたいと思い、材料を買って作っていたのだが、結構時間が掛かる上に面倒くさい。
「バイト先のナゲットで我慢すればよかったかな?」
そんな事を考えていると、部屋のインターホンがなった。
「誰だ?」
俺は油の火を止めて、部屋のドアを開ける。
「はーい……ってなんだよお前らか……」
「なんだとはなんだよ」
「折角来てやったのに!!」
ドアを開けた先に居たのは、大学の友人達三人だった。
手にはスーパーやコンビ二の袋があり、お菓子や惣菜などが見え隠れしていた。
「なんだよ急に」
「お前、まさか忘れたのか?」
「は? 何をだ?」
「今日はアレの発売日だろうが!!」
「アレ?」
アレとはなんだっただろうか?
俺は記憶をたどり、何の発売日かを思い出そうとする。
「あぁ!! エーリアンハンター3の発売日か!!」
ようやく俺は思い出し、少し大きい声で三人に言う。 俺は結構ゲームをする。
しかもこのエイリアンハンターシリーズは俺の大好きな狩りゲーだ。
最近色々と忙しくて忘れていたが、今日が発売日だったのか……。
「やっぱり忘れてやがったか……買ったらみんなで徹夜でやるって約束だろうが」
「悪い悪い、忘れてたわ……お前らは買えたのか?」
「おう、予約したからな! ってか、お前はやっぱり買ってないのか?」
「あぁ……最近そんな暇無くてさ……」
テストは近いし、レポートの提出はあるし、バイトは忙しいしでゲームの発売日をすっかり忘れていた。
「やっぱりか……そんな事だろうと思って……ほれ」
「ん? お、お前まさか!」
「買っといてやったぜ、後で代金は貰うがな」
「おぉーサンキュー!! 上がれよ! みんなでやろうぜ!」
「そのつもりで来てるんだよ!! 今日は寝かさないからな!」
そんなこんなで始まった、ゲーム大会。
そう言えば今月のシフトを出すときに、ゲーム発売日の翌日を休みにしてたっけなぁー。
俺はそんあ事を考えんがら、ゲーム仲間三人と夜通しでゲームをしていた。
俺が作った唐揚げはみんなで食べ、エナジードリンクを飲みながら、みんなでゲームに熱中した。
そして気がつけば時刻は午前二時を回っていた。
「おっしゃぁ! 6体目!!」
「今度こそ素材が出ると良いが……ってやっぱり出ねぇ!!」
「物欲センサー仕事しすぎだな、少し休憩しようぜ」
「そうだな」
少し休憩しようと、全員ゲームを置いて話しをしながら買ってきたお菓子を食べ始める。
「そう言えば、お前らはクリスマス何してるんだ?」
そう言ったのは、この中で一番のゲーマーの尾道だた。
尾道はゲーマーの癖に顔立ちが良く、大学でもモテる。
「彼女とデート」
「良い感じの子とデート」
「次郎は?」
「バイトだよ……悲しくなる事を聞くな」
言い忘れていたが、俺以外の二人は彼女が居る。
そしてもう一人の友人は言っていた通り、良い感じになりつつある女の子が居る。
つまり、この中で一番女っ気が無いのは俺だけなのだ。
「次郎、お前もそろそろ彼女作れよ、バイトとゲームばっかりで良いのか?」
「そうは言ってもなぁ……いい人も居ないし……」
「まぁ、お前は女子と接点を持とうともしないからな……だから俺はそんなお前に大変ありがた~い話しを持ってきた!!」
「なんだよ急に……」
尾道は突然立ち上がり、俺を指さしてそう言ってくる。
「喜べ! お前の為に優しい俺は合コンの話しを持ってきてやった!」
「は? 合コン?」
「しかもクリスマス!」
「いや、バイトだって……」
「バイトって言っても夕方までだろ? 合コンは夜からだ!」
「そんな急に言われても……メンバーだって」
「集めておいたぞ!」
「準備良すぎかよ……」
突然合コンなんて言われても、俺は合コンなんて言ったこと無いし……それに、なんか出会いを目的にしてる感満々で、そう言う場所はあまり好きになれない。
「19時に駅前の居酒屋だ、全員大学生だから安心しろ、それに男メンバーはお前の知ってる奴らばっかりだ」
「いや、俺はまだ行くとは……」
「ゲーム……買って置いてやったのは誰だっけ?」
「うっ……そ、そうだけど……」
「それに、お前が出ないとメンバーが足りなくて合コン自体が無くなっちまう。ゲーム買って置いた借りはこれでチャラにしてやるから行ってこいよ」
「そ、そう言われても……」
結局、俺は流されてしまい、クリスマスに合コンに行く事になってしまった。
ヤバいなぁ……服とか買っておかないとまずいよなぁ……あぁ、また金が飛んでいく。
なんて事を考えながら、俺たちは結局、翌日の朝8時までゲームし、そのまま全員で昼過ぎの3時まで寝ていた。
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