第29話 パスタとフェイク
仕事場の先輩と仕事に出かけてお昼になってしまったので外で食べる事にした時の話です。
「お腹すいたねー」と言いながら道沿いを見るとちょうどイタリアンのお店がありました。
そういう時って駐車場を見ませんか?
車は停まっているかなと無意識に見ると空きが少ないくらい、結構沢山停まってます。
「ここにしましょう」
私達は店に入ると窓際に座りました。
注文をしてしばらくお話していたのですがなかなか料理が出てきません。
「・・・遅いですね」小声で先輩に言うと
「・・・ほんと」先輩も小声で返してきます。
何よりあんなに沢山車が停まっていたのにお店の中には私達の他にお客さんは二組しかいません。
私達みたいに仕事の途中なのでしょう営業らしき人達。
上司と部下の二人連れと同僚らしき二人と私達の三組。
上司と部下さんは食事が終わった所でした。
とても不機嫌そう。他の二人は出る所でしたがやはりムッツリしていました。
なんとなく不穏な雰囲気で
「・・・何かあったのかしらね?」先輩も気になってたみたいで私達はこそこそと喋ってました。
やっとパスタが来て
「いただきますー」と一口。
ん?
・・・不味い。
食べ終わって車に乗った後で二人で
「不味すぎですね・・・」と呟いてしまいました。
あまりの不味さに皆を不機嫌にしてしまったパスタ。
おまけに食べてる間店のマスターらしき人が私達のテーブルに来て、どれだけ店のパスタが無農薬の野菜を使っているかとかトマトの品種のこだわりとか延々と喋られて残すに残せず私達は頑張って完食してしまいました。
一緒にいた先輩は美人だったのでお話したくなるのもわかるんですが・・・。
麺は限りなく伸びソースはシャビシャビだしで驚きでした。
その会社をやめて新しい職場に通うのにそのイタリアンのお店を毎朝通るようになりましたら駐車場のが車で一杯だったワケがわかりました。
隣の町工場に駐車場の半分を貸していたのでした。
毎朝同じ車が同じように停まってました。
いまだにそのイタリアンのお店を見るとあのシャビシャビのソースとノビノビのパスタを思い出します。
ある意味すごく印象に残っている味です。
もう何年も経ってるのに昨日の様に思い出せる味。
印象的でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます