ビリがいるから一位がいる

交通事故で両親が亡くなった僕は、僕と同い年のいとこのいる家に引き取られることになった。

僕もいとこも一人っ子で、兄弟ができたようだと喜んでいた。


でも、それは最初のうちだけだった。

いとこは本当のこどもだから当然だけど、僕はいとこの二の次で、何かと後回しにされる。

引き取ってもらっただけ、ありがたく思わなければ……ということなのかもしれない。


運動に関しては、僕もいとこも同じくらいだが、勉強は僕のほうがはるかに出来が良かった。

いとこの両親は、そのことが気に入らないらしく、僕に辛くあたるようになった。


そこで、僕はいとこと一緒に勉強するようにした。

僕と一緒に勉強したいとこは、学年で一番をとった。もちろん、僕が勉強を教えたおかげだ。

僕はというと、わざと手を抜いて、ビリか下から二番目くらいをうろうろするように。


いとこには、

「僕が勉強を教えていることは絶対に内緒。逆に、僕に勉強を教えていることにしておいて」

と、強く言っておいた。


そして、いとこの両親は僕に辛くあたることはなくなった。むしろ、両親を亡くした可哀想な僕を、いとこが面倒をみてくれていると思い込んでいる。

いとこはというと、学年一位であることを、僕と一緒に勉強していて、自分の復習にもなるから、成績が良いということにしていてくれた。……本当は逆なのだけれども。




ビリがいるから一位がいる。

いとこの影に隠れるようにして、僕は僕自身を守るようになった。

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