13-9 拒絶反応
〈あとで〉とは言うものの、ルーヴェンスの実力と先ほどの言葉を考えれば、決闘をいい結果で終わらせることは難しそうだ。
彼が何者かはわからないが、その思想は、連合魔術師とは相容れないものだ。彼自身が理解を拒んでいる以上、譲歩のしようもない。
勝てないのだとしても、せめて引き分けに持ち込める策はないものだろうか。ライナルトは、自分の魔術師としての限界を思い、焦りを募らせる。
持久戦になれば、間違いなくライナルトの方が不利になる。かといって、勝負を決めるほどの一撃を放つ力もまた、ライナルトは持ち合わせていない。
時間を稼いだところで利にはならないだろうが、今はそうする他ない。
ライナルトは悩んだ末、先ほどと同じルーン列を唱えた。火花がルーヴェンスのもとへと駆けていく。
ルーヴェンスは、彼なりの意地なのだろうか、ライナルトの魔術を相殺しようと攻撃魔術を放つ。一方で、防護魔術で盾を作り出した。
やはりそうくるか。ライナルトはため息をついた。
火花は、ルーヴェンスの抑えた魔術を押し返し、盾のもとへとたどり着くが、爆発の効力は知れている。
それが、敵の防護魔術を打ち砕けないだろうことも明らかだった。
爆発の直前、ライナルトは、動物的な勘が危険を察知したとでも言うべき感覚に襲われ、ほとんど反射的に、簡易的な防護魔術のルーンを唱えていた。
直後。視界が真っ白になり音が消え――爆風が、細長い空間を焼きつくしながら、ライナルトに迫る。
――何が起きた?
爆発が過ぎ、ひびの入ったライナルトの盾が、宙に溶け消えていく。熱に軽くあぶられた肌には、じりじりと焼けるような熱が残る。
見れば、ルーヴェンスの防護魔術もまた、爆発にやられて消えていた。
術が制御を失った感覚はなかった。ライナルトは確かに、正しく魔術を発動させた。もっと効力の弱いはずの魔術を、だ。
にも関わらず、魔術は、ライナルト自身の想定をはるかに超える効力を示した。
それはまるで、ライナルトの魔術に、ライナルト自身以外の誰かが、密かに手を加えたかのようで。
「……馬鹿にして」
ふと。背後に、小さなつぶやきがあった。
ライナルトは、信じられない思いで振り返る。同時に、頭がくらくらするような衝撃に、自身の精神が揺さぶられるのを感じた。
他者の強い感情にあてられたときの、精神が『同調』しそうになる感覚だった。
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