妖怪退治屋かざぐるま

れいた

第1話 はじまり

 何かに集中していると、他のものが見えなくなることが多い。本でもゲームでも良い。一つのことに集中していると、周りの音は聞こえなくなる。でも私はそれを悪いことだと思っていない。なぜなら、集中力が高いことは良いことだと、学校ではそう教えられていたからだ。


 ――私は集中していた。

 本を読んでいたわけでも、スマホゲームをしていたわけでもない。これから向かう会社がどんな感じのところなのか必死に考えて、シミュレーションしていた。

 「今日から社会人。……ミスをしないようにしないと。」

 慣れない化粧、服装、靴、鞄。思っていたより朝の準備に時間が掛った。出勤時間までまだ時間はあるが、少し遅れたせいで電車はやや混んでいた。

 「前回、面接で会社に行ったときは雰囲気は良いと思ったけれど、大丈夫かな。」

 そんなことを考えながら、電車に揺られ、駅に着く。

 会社は駅から少し離れているが、歩いていける距離にある。

 「まず笑顔で挨拶しないと。それから……。」


 ――私は集中していた。

 信号が青に変わったので、私は周りで起こっていることに気が付かず歩き出した。


 白いSUV車がスピードを上げて走ってくる。前の信号は赤信号だ。構わず加速してくる。歩道側の青信号しか見ていない私。信号無視する車に気が付かず、既に横断歩道に歩き出していた。

 

 ――ズドン。

 強い衝撃。彼女の体は回転し、宙を舞い、そして地面に叩きつけられた。

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