【宝】空蝉

「博士、倉庫からこんなものが出てきました」

 私の最高傑作ロボットである彼は、そう言うと古い洋菓子の缶を差し出した。

「これは懐かしい。私の子供の頃の宝物だ」

 缶の中には石や古い万年筆、簡素な玩具が並んでいた。その中の1つを彼はしめす。

「これは、セミの抜け殻ですね。実物を見るのは初めてです」

「地球住まいの叔父にもらったものだ。これを脱いでセミは成虫になる。不思議だろう。母には早く捨てるよう叱られたものだが」

 彼はうやうやしくセミの抜け殻をつまみ上げると、電灯に透かした。抜け殻に琥珀のような光が宿る。

「宝石のようですね。なるほど、これは宝物です」

 そんなはずはないのに、子供の姿の彼が見えたような気がした

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機械の彼が微笑む時は。 荒城美鉾 @m_aragi

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