【写真】ないものねだり

「博士、仕事用の資料室に古いアルバムが紛れ込んでいました」

 私の最高傑作ロボットである彼はそう言った。

「おや、これは懐かしい。まだ助教だった頃のゼミ旅行の写真だね。現在はムービーチップに加工したり、オンラインでの閲覧が主だが、昔はプリントしたものだ」

「まだお若いです…良いものですね、年月を経て顔が変わるというのは」

「いや、私は君のように年月を経ても変わらないというのがうらやましいよ」

 私たちは共に、ないものねだりをしているのだ。

「――それに比べてこの献本の著者近影の顔つき。もう少し良い写真はなかったのかなぁ。昔の私のボスそっくりの頑固づらじゃないか」

「ええ。なるほど真を写す、と書いて写真、ですね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る