大学③ 英会話教室

大学後期に入ってすぐのころ、ある日突然母親にこう言われた。


「あんた英会話教室に行きなさい。」


ああ、また始まった…と思うと同時に、これに関しては「なるほどな」とも感じた。


それまで自分の中では英語は得意な方で好きだし点数も取れていたが、あくまでも大学受験の勉強の範囲内であって、大学受験で特に要求されないリスニングとスピーチ能力に関しては低いということは受験勉強の中で気付いていた事だった。もちろんその弱点を補うのは将来のためにも悪い事ではないだろう。


もちろん行きたい訳ではないが。


まあ親たちに反対した所で意見が通るわけでもないし、おとなしく従うことにした。こうして部活の前に唯一あいていた火曜の午後のコマの時間に、英会話教室に通いだしたのである。




一方、僕は大学に入ってから塾でのチューター(補助教員的な存在のやつ)のバイトを始めていた。部活のない月曜・金曜および週末などに週2-3ペースで通う。それでバイト代は月5万程度になっていた。その頃の唯一の収入源である。


そんな中10月末頃に僕はATMにお金をおろしに行った。2万円程おろした後の残額を見ると、5千円ほどしか残っていない。


あれ?


バイトの給料日後であったので、ホクホク気分でいたはずが一瞬で暗雲が立ち込めた。


そういえば先月もなんか給料が少なかったよな…


何かがおかしい。


家に通帳を取りに帰り、すぐ記帳しにいく。


確認するとバイト代はちゃんと入っていた。4万5千円ほど。


ではなぜ残額が減っていたのか?空白の2万円の行方はその下の欄に書いてかった。


引き落とされていたのだ。引き落とし先は「○○○エイカイワキョウシツ」


えええーー


僕は知らなかった。母親の「英会話教室に行きなさい」は「英会話教室に(自分のお金で)行きなさい」だったのだ!


せめて前もって説明するのが筋だと思うが、おそらくそうなると僕が反対すると思ったのだろう。ご丁寧にも僕に黙って、僕の通帳で手続きしてくれてやがる。くそが。


家に戻り、母親の顔見るなり、「ざけんなーー」的な言葉を吐きかけるが、母親は悪びれずに言う。「だってあなたが自分のために通うんでしょ、もう大学生でバイトで稼げるんだから自分のお金で行くの当然じゃない」最もそうな事をのたまってくれる。騙し討ちみたいな事をしといて。


いや、そこまでするモチベーションはないんで!


翌週から英会話教室に通うのはやめた。


「確かにリスニングやスピーチの練習は必要かもな」的な事を思っていた自分が馬鹿らしくなった。


親たちには心を許すな、もう何度も気付いていたことではあるが再び僕は肝に銘じた。

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え?あれって教育虐待だったんですか? Dr.はじめ @dr-hajimu

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