No.6 セシーリア・オルヘスタル、セシリア・ハルフォード
No.6-1
空を飛ぶということ。
私がいつ、私が私であるという確固たる自我を持ち始めたのかは定かではない。けれども取り敢えず……何はともあれ……自分がいずれ空を飛ばなければならないということを自覚させられたというのが私の最初の記憶であるので、私の自我というものもきっと、その周辺から始まったのではないかと思う。
初めはそれなりの数の仲間が居た。三十人ぐらいだったと思う。そして全員が航空機に乗ることを目指すように仕向けられていた。というより、それ以外の生き方を教わらなかった。
人数は減っていった。
私達が乗る機体というのは色々と特殊で、面倒な下準備が常にあった。その過程で、私達は一人、また一人と数を減らしていった。腕を切り落とされた子は悲惨だった。あらゆる神経系とチューブの連絡を取れるようにしようとして失敗し、断面が傷んで死んだ。自分で食事を取ることも出来ず、その計画が失敗に終わると部屋に放置された。毎晩、毎晩その部屋から泣き声がして、誰でもいいから助けてくれと言っていた。
そういった凄惨な事故と言うにも言い切れない杜撰な人災によって、共に学ぶ仲間たちが死んでいっても、それでも私達は飛ぶことを目指す他なかった。だって、それ以外に何も求められていなかったし、それが出来なければ……死ぬ以外に選択はなかったのだから。
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