No.5-57

 ……この勝利は、局地的なものに過ぎない。戦争全体で見れば、この531高地における戦闘は戦略的意義に欠け、必要のないものであったとさえ言える。

けれども。

多国籍陸軍少将、メグミ・トーゴーの"その後"に絶大な影響を与えた戦闘であった。そこから察するに、この戦闘は局地的かつ限定的なものではあったが、歴史的に見れば大きな転換点の一つであった、とも言える。

この戦闘の直後、彼女……メグミ・トーゴーを迎えに副官のアリア・クーベルタンが輸送ヘリに搭乗して現れた時、兵士達は彼女が本当に陸軍の上級士官であったことを知った……もっとも、その時点で彼女の言っていたことを疑う兵士なぞ、一人も居なかったのであるが。

別れ際に、イーデン・スタンスフィールド軍曹は言った。

「閣下。我々のことはもう忘れるべきでしょう」

 多国籍陸軍少将、メグミ・トーゴーは答えた。

「それは不可能です……いずれまた、何処かで会いましょう」

「……それこそ、無理な話だ」

「では」

 そうして彼女は、陸軍少将から二等兵に落ち、そして陸軍少将に戻っていった。

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