No.5-47
かくして、陣地構築は開始された。軍曹の在所を中央に置き、一定の距離をとって三つの防衛陣地……アルファ・ブラボー・チャーリーが置かれる。それぞれの陣地には人数分の自動小銃や手榴弾に加えて陣地防衛のための機関銃が配置されている。対戦車火力は不足しているものの、陣地につき一つのロケットランチャーを配布することが出来た。
前線司令部となる軍曹のテントに、数人の兵士が集められている。その中には連隊における軍医を代表してイレーヌ・ブロイと、本部付きとしてメグミ・トーゴー(兵士としての呼称はミカサ・アキヤマ)も居た。
「軍曹」
口を開いたのはイレーヌ・ブロイであった。
「私は分かります。他の人選も理解が出来ます……しかし、何故こいつが居るんですか」
イレーヌは彼女……メグミ・トーゴーの方を見た。
軍曹は言った。
「……君がどう思っているかは知らないが、私はな、イレーヌ。こいつはどうも本当に、本人が言った通りの身分なのかもしれないと、私は考えているんだ」
「それが軍曹の判断ですか」
「ここだけの話だ。ここに居る連中には言っておく……上層部の人間から連絡が来た。大っぴらには出来ない事項ではあるが、不自然な増員はなかったかという質問が来た。連絡そのものについては含みを持たせる程度に留めたが、そもそも人員の補充が乏しい我々の元へ、たった一人の増員が、それも公式な通知なしで来るというのは明らかに不自然だ」
「……軍曹がそう仰るのであれば」
「だからこれは諸君には言っておく。こいつを……何としてでも生かせ。他でもない君達だから言う。そういうミッションだと思って欲しい」
彼女。メグミ・トーゴーを除く全ての兵士が……先程まで疑義を唱えていたイレーヌ・ブロイでさえもが、その言葉に従う。
一種、魔術的な光景であった。
そしてメグミ・トーゴーは、彼女達兵士を見て、また同じことを考え始めた。つまり……自分にはそれが理解出来ない、ということを。
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