No.5-46

 指定された山岳地域……軍事的呼称を用いるのであれば五三一高地のある地点まで連隊が移動した時、エダ軍曹は唐突に停止命令を出した。

「第二十七歩兵連隊員を現在から一個陣地単位で分散配置する」

 軍曹に対し、眼帯をつけた兵士……シルヴィア・レインが質問をする。

「命令上はこの高地を通過し、平野へと下る予定になっているのでは?」

 エダ軍曹は間髪入れずに答えを返す。

「これは命令だ!」

 第二十七歩兵連隊先方小隊が停止した地点に連隊員全員が集結すると、軍曹は高地における部隊員の配置を発表した。

「防衛地点は三箇所だ。今回はポイントPのない配置を行う。アルファ陣地においてはサリー・レーン。ブラボー陣地はシルヴィア・レイン。チャーリー陣地はエイプリル・ワイズをそれぞれ地点のリーダーとして任命し、一つの陣地を中隊規模で防衛する構えをとる。陣地構築を行いながら、同時に連隊は前進する。先遣隊を先頭とし、遭遇次第遅滞戦闘を行いながら後続と合流、迎撃の姿勢を取る」

 それに対し、サリー・レーンは思っていることをあっけらかんと言ってのけた。

「あはは。それじゃまるで完全に防衛戦闘配置じゃないっすか!」

 エダ軍曹は目を丸くした。

「それもこれじゃあ、完全に遭遇戦を念頭に入れた配置っすよ。敵、何処にいるんすか?」

「サリー・レーン技能兵!」

 叫んだのはシルヴィア・レインであった。

「越権行為だ。ここは軍隊だ……君なら分かるだろう。行き過ぎだよ」

 シルヴィア・レインのその言を聞いて、サリー・レーンは何やら複雑な表情を見せた後に、素直に詫びた。

「……申し訳ありません。その通りでした」

 エダ軍曹の目は笑ってはいなかった。

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