No.5-38
会議は解散され、準備は即座に開始された。ここまでを通じて、イーデン・スタンスフィールド軍曹の指揮には何処かちぐはぐな印象を覚えるものであったように私は思う。
「先程の会議は果たして、必要なものだったのでしょうか」
砲兵その他の火砲を取り扱う兵士は慌ただしく準備をする中、私は連隊本部付きの護衛の一人として、エダ軍曹のそばに置かれている。
「……先程の会議は必要なかった。つまり君はそう、思うわけだね?」
エダ軍曹はこちらを見ずに、そう言葉を返す。
「……必要がない、と断定することは出来ません。ですが、少なくとも私から見ればそれは必要のないことだったように思えます」
「理由を説明してみろ」
「……現在の戦闘状況を鑑みれば、決断はより早い方が良いはずです。そして、あなたの求心力を持ってすれば、先程のような会議を得ずとも、命令を下すだけで連隊は動いたように思えるのです」
エダ軍曹は笑った。にやりと、声には出さず、不敵な笑みを浮かべた。
「そうか、君にはそう見えるのか……成程、勉強になるよ」
「実際のところは?」
「私の求心力、という点で言うならばそれは是である。が、同時に私が命令を下せばそれに全員が従う、というのは否である」
一拍置いて、軍曹は言葉を繋げた。
「無論、嬉しいことに私を慕う兵士は多い。あのイレーヌやシルヴィアを含め、半分はそうだろう。連隊の半分と言えば大人数のように思えるが、第二十七歩兵連隊は大幅な欠員が出ている連隊だ。そう多くはない……先程の会議でイレーヌがいっていた言葉を覚えているかい」
「『余り物連隊』」
「そうだ。この連隊の通称だ。そしてそれは事実である」
「残念ながら私には分からない語彙です」
「……我が連隊はな。各連隊で傷付いたり、或いは使い物にならなかった兵士や物資を寄せ集めて作ったものなんだよ」
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