No.5-19

 少女が目を覚ました時、視界は暗く、少女は自身が何らかの拷問によって失明したのかと疑った。

身体を動かそうとすれば拘束具で固められていて、それらはびくともしない。

瞬きを繰り返してようやく少女は自身の感覚を取り戻し始めた。どうやら自分は何らかの車両に荷物のように詰め込まれているらしい。目が暗闇に慣れてきてようやく自分の目がまだ生きていることに気が付いた。

そうした記憶の遡行から、自身が男達によって拉致され、無理やり飲まされた……恐らく、睡眠薬の類の影響で眠りに落ちた……というところまでは思い出した。が、それ以降は全く記憶にない。身体中が痛むので彼等が自身をひどく乱暴に取り扱ったことだけは理解出来たが、それまでだった。

自身を積んだ車両が止まるのが分かる。そうして何分か……少女にとっては永遠とも思えるような時間を経た後、車両の扉が開かれ、外からの光が差したのを少女は理解した。

「中に積まれた物資を運び出せ。場所を間違えるなよ。怒鳴られるぞ」

 女性と思われる何者かのしわがれた声が響く。物を動かす音がする。どうやら自分は輸送車両のかなり奥の方にしまい込まれたらしい。荷物をいくつも運び出しているはずなのに、自分の視界は中々開けない。

しかしやがて、自分のすぐ横の荷物が動かされ、直後先程の声の主らしき女性が声を上げる。

「おい! なんだこの荷物は!」

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