No.5-13

 敵軍は作戦第二段階が発動された半ばでようやくこのアルファ地点における軍団の大攻勢に気が付いた。しかし、彼等は有効な対策をうてなかった。

敵軍の兵士たちは無論、後方に位置する司令部に対し、敵が攻勢を開始したことを報告していたが、彼等はその攻勢が行われた地点の狭さから威力偵察であると推測し、その報告を握り潰し、最前線における努力でもって撃退せよと命令した。

後方の司令官たちは、最前線における混乱以上に混乱をきたしていた。彼等は巡航ミサイルによる飽和攻撃が、自らの座する司令部に対する航空攻撃の前兆であると判断し、彼等の危惧する航空攻撃への対処のために空軍を出し惜しみしたのである。

こうした精神的動作。自軍が運用する人工的な兵士たちに対する差別意識に根差す心の動きさえも、彼女は予想しきっていた。それはつまり、こうである。

「我々を差別する男どもが我々の側に居るように、彼等の側にもまた、『彼女達』を差別する人々が居るのであろう」

 その予想はあたっていた。

このような予想を、彼女は敵軍が今まで行った作戦内容から察知していたのである。

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