No.4-15

 衝突実験による傷が完全には瘉えぬうちに、次の実験は開始された。

「次の実験はどれにする?」

 またいつものあの部屋で、あの薄ら笑いの男がそう問いかける。

「細菌実験、これにしましょう」

「容赦ないな。お前」

「別に。死ぬことが確定しているものではない。実験体は、その役割を完全に遂行し終わるまで、死ぬことを許されない。そうではなくて?」

「そりゃ、まあ。この段階で殺すなんてことはまずしないだろうがね……しかしだな。割り切るにしても早すぎるだろう。何があった。それとも誰かが入れ替わったのか?」

 入れ替わり、と言われた時に、私はほんの少しだけどきっとした。

「全く同一人物。イレーヌ・ブロイその人ですよ。何処までチェックすればご納得頂けますでしょうか?」

 そう言って私が半ば冗談で白衣の第一ボタンに手をかけた段階で、男は言った。

「おいおいおいおいおい。冗談じゃねえぞ。そこまで本気にする必要、あるかよ!」

「私に冗談が通ずると思わないことですね」

「全く……じゃあ、今日からはそのメニューで組むぞ。いいな?」

「勿論です」

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