No.4 イレーヌ・ド・ブロイ

No.4-1

 眩い暗闇の中に私は居た。そこは暗くて冷たくて、煙がいつも上がっていて、焦げた臭いが何処からか漂ってきて、土と血が混じって吹き上がるような、大小を問わない汎ゆる爆発物が降り注いできていた。

 空には照明弾、炎上する陣地と敵味方の車両。曳光弾が飛び交い、そこは真っ暗な、夜の防衛陣地なのに、上を見れば眩いばかりに沢山の光が飛び交っていた。私達を殺そうとする、底冷えするような殺意がそこには込められていた。故にここは暗く、そして明るい。両方から殺意が飛び交っているのだ。

「イレーヌ! 目を覚ませ!」

 そうだ。ああ、そうだ。私の名前はイレーヌだ。そして、彼女は誰だ。この戦場で私の目を覚まそうとするのは、一体何処の誰だ。

「衛生兵がのびてどうするんだよ。お前の手を待っている奴が居るんだ。さっさとやってこい!」

 そうだ。この人は……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る