第2話 あたしの生活

今日も起きれませんでした。


1限目と2限目の授業は、基本的に欠席している。

もう単位を取るのも無理だろう。

でも、親には申し訳ないし、こんな生活だとは口が裂けても自分からは言わない。いや、言えない。

幼い頃から、色々な習い事や、色々とお金が掛かることをやらせてもらった。

ピアノにバレエに水泳に、英会話とかお茶とかお花とか。

よく、好きなことをやらせてもらった、って話を聞くけど、特に好きで、自分からやりたいと切望したものは1つもない。

だけど、全てがそこそこ上手に出来ていた。

母は、こんなあたしを、「浅く広い女」という。

母よ、その通りだ!

色々やってきた分、それなりに出来た分、あたしはプライドを手にすることが出来た。そして、それには自信というものは欠けていた。


とりあえずお昼過ぎには学校に行こう。


今日も大学のカフェテリアは混んでいる。

3年前ぐらいに建設されたタワーの3階には、まるで都内のおしゃれカフェのようなカフェテリアがある。

白いテーブルと白いチェア。私には眩しい。

窓側の席にはコンセントも用意されていて、長時間の居座り大歓迎の恩恵を受けた学生達が、キラキラの笑顔を見せながら楽しい時間を過ごしている。

ああ、こっちも眩しい。

とりあえず、日差しの強い窓側は避けよう。

今日も柱の近くの席で、たった1人の大学の友人と待ち合わせをする。

来た来た、今日もふわふわと来た。

彼女は、唯一の大学の友人。

満員電車で息ができるのか?と心配になるぐらい、身長の低い彼女。

いつもゆっくりと時間が流れているような、ふわふわした印象の彼女。

今日も大盛りポテト頼んだんだね。

食べてから授業に行こう。


午後の授業は3限分みっちり履修している。

午前中の授業を諦めた今、あたしには午後の授業に賭けるしかない。

ここで十分な単位を取らないと、実は4年生に進級できないという、大学のまともなシステムがあるのだ。

親には進級できず、とは言えないから、この後期は頑張らなければいけない。


さて、今日も学校の後はバイトだ。


時間をかけずに、なるべく稼ぎたい、という単純なありふれた理由で、六本木のガールズバーで週5日働いている。

東京タワーって、いつ見ても素敵だ。

ネットで安く買ったワンピースを着て、とりあえず女子力高めに整える。

普段ワンピースなんて絶対着ない。

だから、別の自分になれる気がする。

ここでは、勉強を頑張り、明るい将来を夢見る女子大生になれる。

ここでは、誰かに恋される、誰かに求められる自分になれる気がする。


疲れた。今日も1日終わりか。

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