第8話 if


そこは以前、前を通り過ぎただけで何となく覚えていたペットショップだった。


店内は明るく奥の方にケージが見える。

仔犬や仔猫が居そうな感じである。


「わあ…」


「さあ…入ろうよ…」



彼女は早速ケージに歩み寄って中の仔犬を観察し始めた。


「可愛い…」


彼女の今日一番の笑顔がまたまた更新された。




「この子…小さくて可愛いでしょ…ネザーランド・ドワーフって言うんですよ…」




うさぎのケージの前に行くと彼女はうさぎのことを色々話してくれた。




楽しそうに話す彼女の横顔を見て…思えば新生活を始めてバタバタしていた数ヶ月、こんなにゆっくりした優しい時間を過ごすのは無かった気がした。




…今日踏んだ地雷がチャラになったらいいなぁ。



などと、浅ましいことを考えていた僕だったが、彼女の笑顔を見ていると、人生初のデートは楽しいデートになったなぁ。


彼女と一緒にいたら楽しい毎日になるだろうなぁ。



そんなことを考えていた時に彼女が目の前にひょいと顔を出して、


「私だけ楽しんじゃってすみません。あの…宮田さんに御用があったのでは?」


「いや、僕も仔犬や仔猫が見たくなっただけ。

実家の犬に会いたくなっちゃったよ。」


「そう…ですか…あっ!!」


…ピロロロ…



その時彼女のスマホが着信音が鳴って、僕の『どうぞ』という仕草に彼女は軽く会釈した。


「あっ…お姉ちゃん…今、外に出てるんだ…」


電話はどうやらお姉さんからのようだった。


内容は…聞いちゃいけないな…


僕は少し彼女から離れた所で待つ事にした。





しばらくして彼女は電話を切った後、僕の目を直視して、


「あの…宮田さん…突然ですがこの間のお返事を聞かせて頂けますか?」

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