第46話 三角の距離は限りないゼロ

穂香「それは初めて見る景色だった。まるで天使が舞い降りたかのような、空から人が――降ったのだ。あまりに突然のことで、思考する暇もなく、ただ眺めていた。」


ザッブーン。


穂香「えぇぇぇぇええええええ!!! 今のってお、お兄ちゃん!!!」


鈴木「ぶくぶく、ぶくぶく……。口の中からもれていく酸素。無意識に息を吸おうとする。腹の中に水が入って、っゔぅ! ここは水の中だ。俺は、――溺れている。頭の中が突然クリアになり、意識を取り戻した。急いで水面を目指して泳いだ。顔を出すと、そこは駅前のプールだった。……廃墟ビルにいたはずだが……。おっ、プールサイドでは、妹の穂香が手を振っているのが見えた。」


穂香「お兄ちゃん、空から降ってきたよね? ねえねえどうして? 魔法とか?!」


鈴木「空から……。俺が?」


穂香「そうだよ。突然現れて、ザッブーンって。ちょっと格好良かったけど……。」


鈴木「いや……、さっぱりわからん。」


穂香「でも、私とのデートの約束覚えてくれてたんでしょ。嬉しい。早く着替えて来て。」


鈴木「テンパってはいるが、ここは穂香とプールを楽しむことにしよう。更衣室で着替えて……。……まぁそうなるわな。監視の人に厳しく注意され、謝りながらロッカーへ。水着を借り、着替えを終えてプールサイドに戻ると……。」


涼葉「遅い。」


明彩「待ちくたびれたっ。」


穂香「お兄ちゃん……、この人たち誰?」


鈴木「知らん。それに誘った覚えもない。」


涼葉「私の名前は、涼葉。で、こっちは鈴木の恋人の明彩。」


穂香「ええええええぇぇぇ!!!」


鈴木「(穂香が口から泡を吹いて、倒れてしまった。)待て、勝手に恋人扱いするな。非公認だ。(言ったとたんに、明彩さんと涼葉さんからものすごい軽蔑した視線で睨まれた。人を犯罪者のような目で見るな……。俺だって傷つくんだぞ。)」


涼葉「最低な言い方。鉛筆刀で、本当にぶった切ってやれば良かった。私の一年分の優しさを使って、時空を切り裂いて、鈴木をプールに落とす。そして、鈴木は意識が戻る。完璧なアイデアだった。」


鈴木「こっちは、溺れて死ぬところだったんだぞ。――っておい、妹のおっぱいを揉むのやめろ!」


涼葉「ごめん。」


鈴木「お前、目がハートになってるぞ。」


涼葉「可愛い子を見ると、我慢できなくなる。」


穂香「お兄ちゃん、この人たち何? 弱みでも握られてるの? それとも、いじめられてるとか?」


明彩「これが噂の妹さんね。私の方が可愛いけど、可愛いってことだけは認めてあげる。」


涼葉「三角の距離は限りないゼロ。」


穂香「ええ、三角関係って!!! あぁぁ私のお兄ちゃん……。」


鈴木「お前っ突然、岬先生のラノベタイトルで、関係性をこじらせるような言い方は、やめろっ!」




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