三日間

ある☆ふぁるど

第1話

 誰一人知らない森の、ずっとずっと奥深くに小さな泉がありました。


 森の泉に朝が訪れ、明るい日の光が木々の合間を縫うようにして入り込み、小さな泉に反射しました。そのまぶしい光に、彼は眼を開きました。目覚めてしばらく、彼はじっとしたまま動きませんでした。何をすればいいのか、何をすべきなのか、彼には分らなかったのです。長い間、夢を見ていたような気がしました。ただ、それがどんな夢だったのか、どうしても思い出せなくて、ぼんやりとした中途半端な気分でした。

 やがて、彼は、自分が半透明のカプセルのようなものの中に閉じ込められていることに気づきました。そして、気づいたとたん、外に出たい! と思いました。しかし、いくら見回しても、出口は見つからず、彼は途方にくれました。

 ――どうすれば出られるのだろう?

 すると、誰かが答えました。

 ――外に向かって、両腕を伸ばしてごらん。簡単だよ。

 彼は、その言葉に従うことにしました。ゆっくりと腕を伸ばし、恐る恐るカプセルの内側に触れました。それはとても柔らかい感触でしたが、その感じはほんの一瞬で、気づいた時には彼はカプセルから飛び出していました。彼はその空間に浮かび上がり、そっと地上を見下ろしました。彼がいたカプセルが、とても小さく見えました。あんなに小さなカプセルに入っていたのだと思うと、彼はおかしくなりました。

 ――さあ、行こうよ!

 ふいに、さっきの声が聞こえ、彼は慌てて、辺りを見回しました。一面に、たくさんの仲間たちがいました。

 ――行く? どこへ?

 彼は尋ねました。

 ――空へだよ。

 彼は仲間たちに加わりました。


 彼らは、空に向かって、飛びました。手も足も思い切り伸ばして・・・。ただ、ただ、空へ向かって・・・。

 ――なぜ、飛ぶのだろう?

 誰かが答えました。

 ――そうすれば、何かを得られるからさ。途中でやめたものは、何も得ることができないんだ。


 夕日が沈み始めました。体中の力が抜けて、彼らは地上に降りました。皆、疲れ切っていました。夜が迫ってきます。

 ――明日こそは、飛ばなければならない。

 彼らは皆、そう思いました。

 ――与えられた時間は、あまりにも短いのだから・・・。

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