生まれた時から災厄(最悪)の人生

黒煙草

第1話

都会から外れた村は、昔の掟とかある地域が多い


僕の生まれた村では、どんな女性がどんな男性と交わって、いつ、どこで産んだか、星がどの位置にあって、どの星が強く輝いているかで村の長を決めたり、忌み子として村から追い出したりしている


テレビやラジオ、新聞などは存在しない

郵便ポストに入るのは回覧板のみ

学校は小中高一貫

時たまにバスも来るが1日1回だけで外からくる人は滅多にこの村に寄らないほどだ


村の説明はこの辺にしとして、僕の今の状況といえば村と深い森の狭間に位置するボロの小屋で自給自足の生活をしている


昼は農作業を行い、夜は取れた野菜や隣の森から採れた山菜で調理し、食べ、寝るの繰り返し


読み書きは簡単なものしかできない、たまにしか来ない回覧板で文字の勉強をする程度だ


親や兄妹はいるが、生まれてこの方見た事がない



──何故か


僕が災厄の子だからだ──



不思議と、今の村の長にそれを告げられた時は何も感じなかった


その時、村の長に説明された内容は

“お前は忌み子以上に厄介なのだ、だが殺すことは出来ない。この家で生涯を過ごせ“

というものだった


殺す──言葉の意味は当時聞いた時、理解できなかった。


だが身体も成長し、欲求心が湧いた時に『山菜を採る』という名目を偽り、森にある祠周辺にいる兎の首と胴体を素手で分けた時に“殺す“というものを理解した


その時感じたのは


あえて言うなら



────楽しかった


兎を手にして小屋に戻ったら何故か村の長にその事がバレてて鞭打ちされたけど、体が大きくなる前からされてきた日課だったから慣れた


むしろ打ってた人が疲れてたから心配したけど怒られた


転機が訪れた、っていう言葉は最近読んだ新聞っていう紙から学んだ


急に、無意識に、意図もなく外に出たくなって監視していた人に話しかけようとしたら虚ろな目をしてドアを開けてくれた


村の長に言おうかと思ったけど夜だったから寝てるだろうしそのまま走って村の外に行った



気づいた時には村にはない高い建物が並ぶとこに出たので、散策を始めた


新聞という紙を拾ったのもその時だ


街、と呼ばれる建物の集合体は夜と言われる場所でも輝いていた


目が痛かったので細い道に入ると、人の集まりを見つけたので様子を見た


“女だ、楽しむぞ“

“可愛がってやらねぇとな“

“金も出せ服も出せ“

“使い終わったら捨てていこう“


という会話が聞こえ始めると、集団は個を殴り始め、下半身を裸に交尾をし始めた


交尾自体は動物達がやってるのを見た事がある

この集団も交尾をして子を沢山孕ませようと必死なのだろうな、などと考えていた


交尾の最初から最後まで観察した感想としては、孕む側の考慮をしない少し乱暴な交尾だったなと思えただけだ


終わったあとの処理はせず、放置された孕む側は泣き崩れていたが何故かは知らない


気を取り直して細い道を散策しようとすると、また別の集団が現れた


一人一人顔を覆う鉄で顔が隠されていたので表情は分からなかったが、肩が震え、怒っているようだった


集団の中から声が発された

「君は…君がそこに倒れてる女性を犯したのか?」


倒れているメスは“女性“という存在らしい

“犯した“とはなんだろうか?


「答えなさい、返答次第では射殺します」


──射殺


新聞に書いてあった


『⚫⚫県家族全員射殺事件』


殺す──つまり兎をちぎった時のように


思い、自然と、声が出た

「兎……は、嫌だ」


初めてだったと思う、拒絶したのは

嫌だという思いは

昔から監視していた人から言われた事をやってたけど嫌じゃなかった


けど



──殺されるのは嫌だ


「……解析…っ!」

「まだで……!」

「…危険で…しょう!」


遠くで怒鳴り散らす集団を観る

焦っていた、集団は


何か鉄の塊を向けている

それがなんなのか分からなかったが、似たような形なら村の狩人達が動物を狩猟するのに使われるものに似ていることが分かる


動物に向けたものを、僕に向けた

動物を狩猟するものを、僕に向けた

僕が狩猟される

僕が殺される


僕が兎…?違うっ!!!


「僕は、兎じゃないっ!!」


自然と体は言うことを聞いた

短い距離だけど行きたいところがあれば直ぐにたどり着いた


細い路地裏なので、壁に張り付くことに成功した僕は集団の中にいる1人を見る


オスだった


オスは僕がさっきいた場所を見続けていたので、その隙に壁から飛び跳ね、膝蹴りし首と胴体を切り離した


首にだけ衝撃を加えたので身体の方は立ち尽くしたまま


そのオスの肩を両手でつかみ、草鞋のまま隣のオスの首に蹴りつけた


その隣のオスも首だけを飛ばし、身体が倒れた


高い建物の壁をのぼり、白い箱のような(後でわかったが室外機だった)物の上に着地する


集団は4秒の出来事についていけなかったようで、全員が2人の胴体を見て驚いていた


その光景を見た僕は自然と口元が上がり、くつくつと笑う

「狩りは…好きだ……けど、狩られるのは…嫌だ」


1人のオスを見て、跳ね、首を飛ばす


「狩られるのは…お前達だ」




そのあとは…記憶にあるのは


メスは狩らなかったのは覚えてる


狩ったオス達が元気よく高い建物の集合体を駆け巡ったのも覚えてる



そして、僕は高い建物が建ち並ぶ場所を散策し始めた





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