精霊という名の女の子

勝利だギューちゃん

第1話

「やあ、久しぶり」

聞き覚えのある女の子の声がする。


どこだ?

やはり、あそこだな。


いらした・・・


「さすがに、もうわかるね」

「まあな」

女の子は木の上に座っている。


「好きだね。その場所」

「人目につかないからね」

「僕は、知ってるよ」

「君は特別」

決してけなしていないのはわかる。


でも、いい気もしないのはどうしたものか・・・


「でも、下から覗かれるだろ?」

「君になら、見られてもいいよ」

「らしくないこと言わないようにね」

「ハハハ・・・これは、キュロットスカートだよ」

いつものやりとり・・・

楽しい時間・・・


でも、そう長く続かないのは、感ずいていた。


「じゃあ、私はもう、行くね」

「今度はいつ会える?」

「なるべくなら、もう会いたくないな」

そっか・・・

答えはわかっていた。


「でも。君が嫌いだからじゃないよ」

「ならどうして?」

「君が、私と会う時は、君がネガティブな気持ちでいる時」

「うん」

その通りだ。

僕が、ネガティブな時にいる時に、彼女は現れる。


そして、話をする。

すると、不思議と前向きになる。


「私は、前を向いて歩いている君が好きだから・・・

ずっと、好きでいたい」

「わかった。努力する」

「ありがとう。約束だよ」


彼女は消えた・・・


彼女に会いたい。

でも、それは彼女の意思を裏切る。


僕は、前を向こう。


でも、ネガティブな感情は、そう簡単にはぬぐいきれない。

そう、ぬぐいきることはできない。


あらから、50年が経った。


「久しぶりだね」

「ああ、50年ぶりだね」

「覚えていてくれたんだ。私の事」

「もちろん」

そう、ネガティブはぬぐいきれない。


それは、臨終の時。

少なからず、抗うものだが・・


「でも、私との約束は守ってくれたね」

「えっ」

「今日まで、君は私を呼ばなかった」

「嫌われたくないからね」

時が戻った気がした。


「でも、君はあのころのままの、可愛い女の子だね」

「私は、精霊だからね。でも、君はすっかりおじいさんだね」

「僕は、人間だからね」

他愛のない会話・・・

あの頃と変わらない。


「そろそろ行く?」

「うん。エスコートたのむよ。精霊さん」

「男がエスコートするものだよ」

「今は、肉食系女子が当たり前なんだよ」

「君らしいね。じゃあ、行こう」

「OK」


精霊と言う名の彼女。

僕の魂を、どこに誘ってくれるのかはわからない。


でも・・・


せめて、彼女と同じ世界であることを祈ろう。

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精霊という名の女の子 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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