第十九町人 マキャリナさん

 果物売りのマキャリナさんは、いつでもどこでもおしゃべりさん

 目が合ったなら逃げられない、次のお客が来るまでに、

 お喋り、小話、長話


 町の皆は笑顔の裏で、ため息ついてはくたびれてるが、

 町一番の果物といえば、マキャリナさんのとこしかない

 夜明けに愛想、日暮れに愛嬌、止まらぬ語りに堪える日々


 ある日、嵐の夜の後、泉に怪物棲みついた

 緑の鱗に、鋭い牙と、真っ赤な目をした、化け大蛇

 頭は九つ、眼光十八、町の皆は近づけず


 市長と取り巻き向かったが、何せ一度に九つ喋る、

 挨拶、威嚇に悲嘆と冗談、混ざり混ざって大合唱

 困ったところにマキャリナさん、果物売りにやってきた


 一度口を開いたら、風の様に止まらない

 マキャリナさんの口の早さにゃ、怪物すらも舌を巻く

 負けじと一度に九回喋るが、マキャリナさんは大喜び


 止まらぬ、終わらぬ、永遠話

 やがて怪物、話に飲まれ、気が付きゃ九首、喜怒哀楽

 喉が渇けば果物貰い、飽きることなく、よもやま話


 今じゃすっかり仲良し二人

 怪物いれば話も短く、果物買えると町の衆

 マキャリナさんが話していれば、怪物だって怖くない


 打算と利用の視線がきても、二人はとんと気にしない

 尽きぬ話が出来るのならば、二人はずっとかまわない

 お喋りを止める者はおらず、二人にゃ誰もかなわない

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