第十八町人 ミスターコム
噴水広場のミスターコムは、町で噂の大マジシャン
シルクハットにマントにステッキ、どこから見ても魔法の紳士
「お腹が空いたよ、ミスターコム」
「お安い御用だ、少年よ」
ミスターコムが自慢のマントをひるがえしたら、リンゴが一個落ちてきた
「動物が見たいわ、ミスターコム」
「お安い御用だ、お嬢さん」
ミスターコムがシルクハットをくいっと正せば、路地裏の猫がにゃあと鳴く
「腰が痛いんだ、ミスターコム」
「お安い御用だ、お爺ちゃん」
ミスターコムが硬いステッキで腰をつつけば、お爺ちゃんの痛みもほぐれる
「リンゴも猫も偶然だろうし、最後に至っちゃマッサージ。これのどこが魔法だよ」
呆れる青年にミスターコムは不敵な笑い
「それではあなたはどんな御用で?」
「それじゃあ瞬間移動はどうだ」
「お安い御用だ、青年よ」
ミスターコムがぐるぐる回る、目にも留まらぬ速さで回る
ぴたりと止まったその時にゃ、ミスターコムの姿なし
シルクハットにマントにステッキ、消えた場所に服だけ残し
ミスターコムはどこへやら
大騒ぎする広場の皆 遠くの影から見つめる少年
「ちょっとエリオットくん」
少年、声に振り向くと バツが悪そうなミスターコム
「これじゃ消えっぱなしになるしかない」
物陰でまごつく裸の紳士、影の中で笑う少年
「服が欲しんだ、エリオットくん」
「お安い御用さ、ミスターコム」
こそこそ隠れるミスターコムは、町で噂の大マジシャン
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