第三町人 エリオットくん

悪戯好きのエリオットくんは、全身影のように真っ黒け。

たまに誰かの影に潜って『わっ!』と驚かすのが何よりの趣味。


どこかに出掛けたい時も、誰かの影に入りこみ、

運んで貰えば、楽ちん人生。

行き先決めずに気の向くまま、街のどこでも現れる。


ところが、今日はぱったりと、エリオットくんの声がしない。

不思議に思った住人達に、


「おーい、ちょっと助けてくれー」


聞きなれた声はするけれど、誰の影からも聞こえてこない。


「エリオット、一体どこにいるのさ?」

「灯台の影の中!どうにも中で迷っちまって出口がまったく見つからない!」


町で一番高い灯台、影の長さも町一番。

あっちもこっちも探してみるが、影も形も分かりゃしない。


さて困ったと首を捻る皆に通りすがりの誰かが一言。


「じっとしとりゃあ、いいんじゃよ。暫く待ったら出られるさ」


半信半疑で待ち続け、おやつの時間になった頃。


「いてっ」


灯台の影が傾いて、影の端っこに頭をぶつけたエリオットくん。

ようやく這い出て一安心。

皆、手を叩いて喜んだが、既にエリオットくんの姿は無し。


たぶん誰かの影に引っ込んで、

きっと誰かのおやつを摘まみ食い。

懲りない、めげない、町一番の、わんぱく小僧。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る