ひとりとひとり

人間は一人なのだと思う

最初から最期まで

どう足掻いても


人という舟は一人乗りだから

そういう意味では生き物は皆

孤独なものだなと思う


孤独について考える


自分の心の中の全てを

他人ひとにわかって欲しいと望んでも

それは無理だ


自分だって

他人の心の全てなんて

わからないのだから


そういう意味でいえば

多分、孤独でない人間なんていない


誰もが自分の孤独を

どこかに、なにかを、抱えている


だけど、それに気がつくのは辛い

それを認めてしまったら

自分のこの耐え難い寂しさをどうすればいい


孤独を抱えているのに

皆、ちゃんと折り合いをつけて生きている

何故それが当たり前にできる?


そう思うと、やり切れなくて

孤独を自分一人のものにしたくなる

この孤独は特別なのだと叫びたくなる


本当は知っている

孤独を抱えながら人は人と手を繋ぐ

孤独は消えなくとも癒やしあうことはできる


ひとりとひとりは一つにはなれない

でも、手を繋いて二人にはなれる


なぁ


少しだけ

ほんの少しだけ

目を開けてみないか?


それはとても勇気のいることだけれど

固く瞑っていた目を少しだけ開けて

自分の掌を見ることから、まず


何一つ持ってなどいないと

そう思っていたはずの握っていた掌に

もし、花びらの一片でもあれば


それは彩りにならないか?

僅かでも貴方を微笑ませてはくれまいか

暗黒の中の仄かな灯ほどでも


人間は一人だ

一人で孤独な存在だ


だけど、ひとりとひとり

そっと手探りでもいいから

温もりを繋ぐことができたら



そんなことを考えている


傷だらけで哀しい目をしながら

いつも周囲を睨みつけている

そんな貴方を思いながら


そんなことを考えている。



◆◆◆


*自作品「夜ヲ想ウ、ウタ」

” 暗黒を纏う男 ”へ捧ぐウタ。

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