半夏生

いつの間にか

蝉の鳴く声が聴こえるようになった

七月、雨上がりの午後


すっかり重くなった空気が

息を苦しくして

耳鳴りと蝉の声が二重奏している


繰り返してきた、この苦手な季節が

懐かしさを伴ってきたのは

歳を重ねてきたからだろうか


今日の問題を明日に

持ち越す事が多くなったと

溜息を一つついてから苦笑いする


処理能力の低下

記憶力の悪さは昔から

忘れたい事ほど覚えている癖に


そして



雨に洗われた青葉が

その勢いを増す頃に

今年の生命力いのちに溢れた

新しい夏が始まる



ああ、蝉の声がする

片白草かたしろぐさが揺れている

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