わたしたちはみんな

舟に乗っている


それは小さな舟で

一人しか乗れない


どんなに質素でも

どんなに豪華でも

自分ただ一人だけの舟だ


舟同士がすれ違うことはある

共に並走することもある


でもどれだけ近づいても

一つの舟に二人は乗れない


すれ違う時には

たまに手を振る

夜には

灯で合図を送る


ずっと隣を進んでいたのに

姿がなくなることもある


小さな舟のその中で

何が綴られ営まれたかは

他の人にはわからない


わたしたちはみんなそれぞれ

小さな舟に乗っている


それは儚く脆い舟だけれども

たった一つのものだから

舟が進むその限りは

精一杯に舵をとり


別れる時には

手を振ろう

大きく大きく手を振って


小さな舟の想い出を

しっかり胸に抱きしめて


真白い帆をぴんと張り


地平の先へ去り往こう

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