舞台

人は

ひとの人生を代わることも

ひとに人生を背負って貰うこともできない


それがどんな舞台であっても

その舞台は自分だけのものだ


華やかな舞台裏が とてつもない孤独と痛みと疑心暗鬼ぎしんあんきに彩られていたとしても

一見みすぼらしい舞台がな温もりと笑顔と慈しみで溢れていたとしても


観客席から見えるのはいつも

観客が 見たい舞台だけ


演者と観客はいつも入れ替わりで

万華鏡のようにそのたび場面を変える


登場人物も

物語も

わからないまま演じ続けて


時には心ならずも

間違え野次やじられても

幕は定められた終演まで下ろせない


ラストシーンも知らされずに

肩で息をしながら

ふと思い出すのは

あの陽だまりのタンポポ


靴跡も生々しく茎も折れかかり

小さな黄色い花は

それでもただ 其処そこで咲いていた


ただ咲くことの 難しさ

ただ生きることの難しさ


この舞台で生きることしか出来ぬのなら

萎れ果てるまで此処ここで咲いていようか


タンポポの柔らかな黄色が

目をつむる前に見る最期の景色なら

そう悪くないかもしれない


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