離したのはお前だ

俺は掴んだ、掴み引っ張り上げようとした

だが、離した

自ら傷つき、自ら世界を醜悪なものとしたんだ


当初はそんなつもりはなかったのだろう

勝手に惹かれて勝手に終わった

惑わされ、危うく落ちるところだ

悪意は無く、善意でもない

何が必要だったんだろう、いや寄りかかれればなんでもよかった

悪魔などという陳腐なものじゃない

醜悪で愚鈍な怪物だったのだろう

悪魔のほうがよほど美学というものがある

それを一度掴んだ

掴むこと自体が間違いだった

愚かだ、いやむしろ幸運だったと思う


学んだ

怪物が居る

この世界にはこういった悪意が転がっていると

自分が傷ついたと言い相手を手に入れようと愚かにも同情を誘う

同情を誘うために弱いことを主張し懐柔しようとする

擬態だ

これは擬態

中身は醜悪な怪物だ

救ってはいけない、いや救ったところで自ずと消え対象に傷を残す

これは毒、いや病なんだ

そういった病が蔓延っていて、健康な細胞を侵食する

そして少しずつ壊していく

手を離すのも病の一つだ

どうすれば相手が傷つくのか、どうしたら相手が悲しむのか

自覚も無く行動する


なぜならそれは病だからだ

それが行動原理だからだ

手を掴むことは間違いではない、助けることは間違いではない

問題はそこじゃないのだ

取捨選択が必要だということ

未熟な自分を呪うがそれよりも理解したことが大きいだろう

病は存在する

世間に広めたい、掴んではいけない手がある

触れれば全てを侵食される

中には抗体を持つ人も居るだろうがそれはごく一部だ

どうにかして侵そうとするだろう、破壊しようとするだろう

どうか、どうか、一人でも多くの人がその病に侵されることの無きよう

いや、できることならば病に出会わないことを祈ろう

これは病に出会ってしまい、手を掴んでしまった者からの忠告だ


エゴイズムは君を滅ぼす

誰彼構わず救うのは止めるんだ

病に出会う前にね

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