夢見た君と異世界で〜神から貰ったスキルで異世界無双〜

春晴暖

一章 夢で見た少女

第1話 始まり

 夢を見ている。それはほとんど毎日の様に繰り返される夢だ。


 その夢に出てくるのは俺と銀色の長い髪に赤い宝石の様に輝く瞳を持った十代半ばに見える少女だけ。

 その少女の体には多数の切り傷があり、着ている純白のシンプルなドレスには所々血が滲んでいた。

 場所は暗く深い森の中で、木々の間から月明かりのような光が二人を照らしていた。


「――!」


 しかし夢の中でその少女に声をかけようとしても、声になることは一度もなく、少女がこちらを振り向くことさえもなかった。

 そして、いつもならここで夢から覚めて終わりを迎える。だが今回だけは違った。


「――もうすぐだから」

 

 少女がたった一言そう呟いた後、俺と少女の瞳が重なった――




 起床を促す音が部屋の中に鳴り響く。

 目覚まし時計は朝の五時三十分を指していた。


「んっ、んーー!もう朝かー」


 頭上にある目覚まし時計を寝ぼけ眼で止めた俺の名前は赤木紅介あかぎ こうすけ。年齢は十八歳である。

 そこそこの高校を卒業し、今日この日に大学の入学式を迎える大学生だ。容姿はイケメンとまでは言わないが、悪くはない……と自分では思っている。身長に関しては高過ぎず、低過ぎず175センチとまあ普通だ。


「……またあの夢を見てたのか。でも、いつもと少し違ったような……?」


 大学へ入るにあたり、独り暮らしを始めたばかりだからか、寝付きもあまり良くなかったし、夢に影響を与えたのかな、と自分を無理矢理納得させる。


 大学までは一人で住んでいるこのアパートから徒歩二十分も掛からずに通学することができるのだが、どうしてこんなに早い時間に起床したのかといえば、入学を控えて緊張している――などといったこともなく、ただ日課になっているジョギングをするためだ。

 天気が悪い日を除けば、約二時間のジョギングを毎日こなしている。

 別に特定のスポーツをやっていたり、大学でサークルに入る予定などは今のところないが、身体を動かすことは昔から好きであったため、何となくで続けていた。ちなみに、運動神経は自分で言うのもあれだが良い方だと思っている。




 朝食を手早くシリアルで済ませ、寝間着からジャージに着替える。そして日課であるジョギングをするため、アパートのすぐ近くにある河川敷へと向かった。


 河川敷はしっかりとアスファルトで舗装されており、ジョギングコースとして近所に住む人々によく利用されているらしい。

『らしい』というのは、たまたま最近出来た年配のジョギング仲間から聞いた話だからである。


 流石にこの早い時間では周囲に人の姿はあまり多くは見られない。

 たまにぽつぽつと見かける人々は、犬の散歩をしている人や、俺と同じくジョギングをする人など、日常的にこの河川敷を利用しているであろう人たちばかりだ。


 そんな、いつもと変わりない河川敷で三十分ほど走っていると、ふいに強烈な疲労感が俺を襲う。呼吸は激しく乱れ、手足には力がほとんど入らない。


「……はぁ、はぁ。……ダメだ。もう無理、走れない」


 あまりの辛さに、誰に向けるでもなく独り言を呟いてしまう。

 これ以上走ることは出来そうもない。だからといって、こんな状態では歩いて家に帰ることすら困難である。

 その場で少し休憩を取ってから帰ろう、そう思った時だった。


 ――隕石が自分のすぐ後方に落ちてきたかのような轟音が聞こえてきたのは。


「――ッ!?」


 後ろを振り返ると、黄金色に輝く巨大な二枚扉がそこにあった。


「……えっ? なんだこれ? ……ドア? どこでも○アならぬ、いきなりドア? ――って、そんなくだらないことを言ってる場合じゃない……よな……」


 あまりにも突然の出来事に、先程まで感じていた疲労はいつの間にかにどこかへと吹き飛んでいた。

 その代わりに、というわけではないが、かなり寒いギャグを咄嗟に口にしてしまっていたようだ。

 もし他人にこのくだらないギャグを聞かれていたとしたら、顔を赤くしながら全力疾走でこの場から走り去っていたところだろう。


 だが、その心配は不要であった。辺りを見回しても、人の姿は誰一人として確認出来なかったからだ。


「……あれ? さっきまでは河川敷に何人かいたはずなのに……」


 そう不思議に思っていると、目の前にある黄金色の巨大な扉から異様な雰囲気を感じ取り、何故かその雰囲気に引き寄せられた俺は、自然と扉に触れようと手を伸ばしていた。

 すると、俺が扉に触れる前にも関わらず、その扉は直視出来ないほどの眩い光を放ちながら音を立てつつ、ゆっくりと扉が開かれていく。


「――うっ!」




 光に抵抗しようと、強く閉じていた瞼を徐々に開けていくと、そこはさっきまでいた河川敷ではなく、暖かな光を感じる真っ白な謎の空間だった。

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