二度目の恋愛

ぬたこ

第1話 出会い

「はぁ…」


 俺の小さなため息は誰もいない夜の公園にゆっくりと消えていった。俺は残業が終わり、公園でホットコーヒーを飲みながら一息ついているところだった。もう時刻は8時を回っている。これから帰って自分の夕食を作り、風呂掃除をして、洗濯を…やることが山積みだ。そりゃため息も出る。


 一人暮らしなら仕方がないが俺には専業主婦の妻に一人娘がいたはずだ。最初の俺は仕事ばかりで家のことが何もできなかった。何か手伝いたくて皿洗いの一つでもしようとすると妻は休んでてと優しく声をかけてくれる人だった。妻は娘を産んでから変わってしまった。週に何回かは家にいなくて深夜に帰ってきたりする。しかも、残業で遅く帰っても夕飯がなくて自分で作らなければならなかった。何か買って帰ると「自分だけいいもの食べて」と嫌味を言われる始末だった。


 娘も小さいころから反抗期で関わろうとすると「うざい、キモイ、汚い」と言われるだけだった。一番風呂や一緒に服を洗濯するのも拒否されて、風呂は一番最後に入り、終わったら掃除をして、洗濯機をまわした。家事が終わるころにはもう11時も過ぎ、仕事と家事につかれた俺は寝てしまう。


 家族にさえ拒否られ、ただ金を稼いで家事をして自分のしたいこともできないで俺なんで生きているんだろう。


「はぁ…」


 二回目のため息をつく頃にはもうコーヒーも飲み終わってしまった。空き缶をごみ箱に捨て、重い腰を上げ帰ろうとした。その時優しい風が吹き、甘い良い匂いがかすかに感じられた。


 後ろに気配を感じ、振り向くとそこには制服を着た女の子が立っていた。胸ぐらいのストレートな長い髪に、きちんと制服を着こなしていてまさしく「清楚」という言葉が相応しい女の子だと思った。


「こんばんは」


 心地の良い声が響いた。


 まさか声をかけられるとは思わなくて少しぼーっとしてしまった。


「こんばんは」


 慌てて返事を返した。しかし、話が続かず沈黙が続いた。


「部活帰りかな?気を付けて帰ってね」


 こんなおじさんに用はないだろうと、それで会話は終わるはずだった。しかし彼女はニコッとして俺に声をかけてきた。


「私と一緒に遊びませんか?二万円でいいですよ」

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