俺は幽霊《きみ》と恋をする。
兎神 入鹿
プロローグ
「ねえ
布団の上から女性の声が聞こえる……。
「あと5分だけ……」
低血圧だから朝は起きるのが辛い……。
「ダメだよ! ほら起きて!」
布団を剥がされた俺は渋々布団から起き上がり洗面所で顔を洗い、リビングに戻る。
「ご飯作っておいたから、しっかり食べてね? それとお弁当も作っておいたから」
そういって彼女は俺のバッグの中にお弁当を入れる。
「いつもありがとう……。それじゃあ食べ終わったし、一緒に行こっか?」
そういって俺は彼女と一緒に新しい高校に向かうことにした。
「継君、ちゃんと前見なきゃ危ないよ? ほら電柱にぶつかるよ?」
そんな声と共に顔が柔らかいクッションに包まれる。
「ちょっ、もぅ~っエッチなんだから!」
そんな声と同時に柔らかいクッションに押しつけられる……。
「ごめん……。離してくれないと学校に遅れちゃう」
柔らかなクッションから逃げ出して足早に高校に向かう
『ママ、あのお兄ちゃん一人で何喋ってるの?』
『きっと疲れてるのよ。そんな事より早く幼稚園に行くわよ』
そんな声が聞こえる……。
「ごめんね、私のせいで継君が変な子扱いされちゃってるよね?」
申し訳なさそうな顔で彼女が謝ってくる。
「気にしてないです。あんなの勝手に言わせておけばいいんです。それよりもこんな時期での転校だから友人が出来るか不安ですよ……。どうしたら良い印象を持ってもらえますかね?」
そういって俺は赤信号を見ながら隣に居る彼女に相談をする。
「そうですね……。とりあえず人が居る所で私と喋るのは良くないと思うよ? 可笑しな人だって見られてるよ?」
赤信号で立ち止まっている人たちが怪訝そうな目で俺のことを見つめている……。
「そんなこと別に気にしてないよ? 昔から、そういう視線には慣れてるからね! それよりもさっきはありがとう」
そういって信号が青になったので横断歩道を渡ろうと歩き始めると、急に首襟を掴まれ後ろに引っ張られる……。
「ちょっ、誰? 急に引っ張られると危ないじゃ……」
文句を言おうと声を荒げた俺の目の前を信号無視の自動車が通り過ぎる……。
「急にごめんね? だけど私が引っ張らなかったら君、轢かれてたよ? ちゃんと左右確認してから渡りましょうって幼稚園で習わなかった?」
振り返ると、これから向かう高校の制服を着た金髪で碧眼の女子高生が立っていた……。
「助けてくれたんだね、ありがとう……。確かに確認をしなかった俺も悪いけど、まさか車が信号を無視してくるとは考えてなかったから……」
そういって立ち上がり制服に着いた砂を叩き落とす。
「もうちょっとしっかり周りを確認するんだよ? それじゃあ私は少し急ぐから」
女子高生はそういって颯爽と立ち去っていってしまった……。
「あっ、名前を聞くの忘れた……。まぁいっか、そのうちヒョコっと学校で会うかもしれないし……。それじゃあ俺達も急ごっか」
そういって俺は走ることにした……。
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