第2話 ラストバトル1 sideヒロイン
「さあ、行こうか」
最終決戦を前に、なんだか気が抜けてしまって、私は知らず笑っていた。
ああ、これで終わるんだな。
よっぽど私は可笑しな顔をしていたのか、皆も笑って頷いてくれる。
拳を振り上げ先に立って歩き出した一人に、口々にみんな自分を鼓舞するように声を出しながら、後に続いていく。
ああ、皆がいる。
きっと、勝てる。
微笑みは、知らず深くなった。
一歩を踏み出したその時、腕を取られて振り返る。
いつもの無表情で、彼が私の腕を掴んでいた。
問う間もなく、告げられる。
「約束しろ」
まっすぐに見つめられて、戸惑う。
「生きて帰れたら、俺と結婚」
余りに予想外な言葉に、私の時間は止まってしまった。
それなのに、ここまで突飛なことを言い出したのに、彼はあくまで無表情なのだ。
あまりにらしくて、笑いが出る。
胸がじわりと暖かくなった。
「わかった、結婚式は盛大にね」
答えながら可笑しくなって噴出してしまう。
最終戦の前に、何やってるんだろう!
「約束だぞ」
彼を促して歩き出して、
「うん、約束」
私は頷いた。
そうなると良い。
最終決戦を勝ち抜き、生きて、彼と生きれたら良い。
「老後は縁側でお茶な」
付け足されたらしくない言葉に、ついに涙が出てしまった。
目尻を拭いながら、笑いにそれを誤魔化した。
「あははは、それ採用!」
いつまでも話している私たちに焦れたのか、
「何してんだ、早く来いよ」
と、二人を呼ぶ声。
彼を見ると、彼が、笑った。
普段無表情な彼が稀に笑うと、子供のような顔になる。
それが、大好きだった。
大事に胸に仕舞って、駆け出した。
腰に差した剣が跳ねて、私を急かした。
生きた帰れたら、結婚。
だけど私は、生きて帰れるなんて、思ってもいなかった。
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