宝地図で一攫千金 ~俺が億万長者になるまでの道程~
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第1話 トリュフ取りの財宝発掘
俺は運がいい。幸運の女神に愛されているのだろう。
今もトリュフ取りのパートナーである愛豚のシュロがトリュフを見つけたようで、勇んでオークの木の根元へ飛んでいく。トリュフは栽培することができないから、こうして
しかし、シュロもトリュフは大好物なので、"待て"といっても聞かないことも多い。
だから、シュロが見つけたトリュフは俺が掘り出すことが常である。
そして、俺は木でできたスコップを使って慎重にトリュフを掘り出す、が、このトリュフはどうも深くにある。
20センチも掘ったところで、ようやくトリュフの頭が見えて、さらに慎重に掘る。トリュフは大振りで、しばらくは豪勢な生活ができそうだと思いながら掘ると固いものに当たった。人の手はほとんど入っていない森の中だから、大きな石や木の根にに阻まれることなんてよくあるから、トリュフ周りの土をどかしてトリュフを取り出した。
なんということでしょう。そこには朽ちかけた木でできた箱があるではありませんか。
初めての経験でどうしたもんかと考えながらも、箱の中身が気になる。そもそもトリュフがこの箱の上で育っていたことを考えると、何年、いやこの木箱の朽ち具合から言って何十年もこの木の根元に埋まっていたに違いない。
恐る恐る木箱も掘り出すが
表面だけの土をどかすと、一抱えもある大きさであることがわかる。俺は横着をして木箱が埋まっている状態で上蓋を引きはがす。なにせ腐りかけている木で、元は頑丈に作られていただろうが、さほど苦労せずに開けることができた。
木箱の中には金貨に銀貨、宝石、金銀でできた装飾品、ナイフ程度の大きさの宝剣に高価そうな魔道具と豪華絢爛
「はぁ?! ……なんだ? 夢か? 俺がおかしくなっちまったのか?」
しかしこれは夢じゃない。頬をつねると痛いし、それでも確認のため自分の髪の毛を強く引っ張るとこれも痛い。圧倒的に高価であるという自己主張をする箱の中身に、目じりも口元も緩んでしまう。これ、持ち帰れんのか、いや持ち帰る! と決意してトリュフを収穫後に入れる袋では圧倒的に容量が不足していることに気が付いて、何か方法はないかと考える。
大きな袋を取りに行っている間に、他のヤツに見つかったら大事だ! そう考えて俺は自分の服を風呂敷代わりにすることを思いつく。いや、思いついたがシャツじゃこの財宝は運びきれない。
そうだ! ズボンを袋にすりゃあいい、とくたびれたズボンを脱いで、胴側のベルト代わりの紐をきつく締めて、足首側から財宝を詰めていく。箱が空っぽになったとき、財宝でズボンはパンパンになっていたが、家まで持ってくれれば、こんなボロいズボンは、その後にはじけ飛んでくれてもいい。
ズボンの足首側を1つに縛り、首にかけて運ぶ準備をしてから、木箱のあった場所を元のように戻す。
「いやゃっっっつほぉーーーう!!」
これまで我慢していた喜びが決壊してつい、叫んでしまうが、村からも随分離れているので誰にも聞かれていないだろう。聞かれていないことを祈る。
そうして、俺はずっしりと重くなったズボンを背負いながら、村へと帰った。
パン一の俺を見かけた村人は訝しみながら「どうした?」と聞いてくるが、トリュフの他に松ぼっくりを取りすぎてズボンで持って帰っていると誤魔化して、その場をやり過ごした。松ぼっくりは、油分を多く含むから、火付けの際に重宝するから、大量に取ってきても不自然じゃない。ズボンを脱いでまですることじゃないが、変な目で見られてもいい。
俺はこの財宝で、王都に移り住むんだから!
◇◆◇◆◇◆
村ではこの財宝を捌くことができないから、俺は王都にやってきた。
2週間かけて乗り合い馬車に揺られ、最低限の費用を除いて、別の箱に移した財宝が気が気じゃなくてほとんど寝れなかったが、そんなツライ生活とは今日でおさらばだ。
村では仲良くしていたヤツにも、俺が王都に行くとは言わず、いつもトリュフの納品は村からそう遠く離れていない街へ持って行く。いつも通りにトリュフを納品するフリで出かけているから、愛豚のシュロも連れてくることはできなかった。苦渋の決断だったが、シュロはトリュフ取りが上手いことを、村の連中は知っているから、俺が戻らなくても上手いこと、トリュフ豚としてやっていけるだろう。……シュロ、元気でな。
まずは宿を取ろう、そうしよう。鍵もかからないような安宿は論外だが、手元には2万フルトとほどしかない。箱を開ければいくらでも金貨と銀貨があるが、こんな往来でそんな真似をするのは馬鹿か取られても惜しくないほど大金持ちくらいだろう。俺はそのどちらでもないからそんなことはする訳ない。寝不足と慣れない馬車でボロボロな俺を、優しく慰めてくれるベッドを求めて、重い箱を抱えながら、にぎやかな街を彷徨い歩く。
そこそこのランクっぽい宿へ入ると、一人晩飯付き1万5000フルトで泊まれるということだったので、疲れもあって、その宿に即決する。ちゃんと鍵がかかる防犯面も確認済みだ。
宿の台帳に記名を促されたので、名前と年齢、性別を書いていく。
【 ペイル | 26才 | 男 】
そう、俺はペイル、26才、そして男だ。職業は少し前まで、トリュフ採集屋だったが今は無職だ。
◇◆◇◆◇◆
んあー、と大きくあくびをする。まだ眠いが、宿のチェックインが夕方だったことを考えると、今寝直すときっと夕食を食いっぱぐれてしまう。ぐっと身体を伸ばし、宿に併設されている食堂へ向かう前に、クローゼットに入れておいた、財宝箱を確認するが、当然開けられた形跡はない。これで安心して食事に行ける。
「いらっしゃいませー。ご宿泊の方ですね。部屋の鍵を見せていただけますか? 」
宿の従業員でもあるのだろう、若くてかわいい三角巾を付けた女性従業員にそう言われたので、俺は言われた通り、部屋の鍵を見せる。それから、いくつかメニューが選べると言われたので、メニューを見るが、村では見ないし聞かないメニュー名だから、パンとおすすめをとだけ告げて、食事を持ってきてもらう。
しばらく経って出てきた夕食は、白いパンと、肉がゴロゴロ入ったシチューと、とろみのついたスープで村での食事はもちろん、王都までの旅の途中で食べたどの食事よりもうまかった。特にパンは普段の少し酸味のあるものでなく、柔らかくて甘い上質のパンで2度おかわりをしてもまだ食べたくなるような上等なものだった。酒は別料金だということで、予算の都合と財宝を捌くまで不覚は取れないから、今日は飲まないでおく。この宿ならきっとうまい酒も出るだろうから、惜しいがまずは財宝第一だ。
それから部屋へ戻り、頑丈な木材と釘で滅多打ちにしてある財宝の箱を解体する。多少うるさくもあるが、まだ寝るような時間じゃないし、部屋の壁も厚いだろうから気にせず続ける。箱の中には詰めた時と同様にみつしりと金銀財宝が詰まっていて、王都への出発前と何もかわらないことを確認して安堵する。旅の途中で購入した頑丈な帆布にも使われる布でできた袋に詰め替えていく。金貨と銀貨はしばらくの生活費に充てるため、それぞれ数枚だけ腰のポーチの中に入れ、それ以外の金貨と銀貨は、大きな袋の底に詰めていく。金貨と銀貨は今流通している通貨より古いデザインで、今流通している硬貨に両替をしないといけないが、袋を開けた時に誰かに見られるのはマズイ。金貨と銀貨を詰め終わってから、服を上に被せ、簡単には見えないようにする。それから重い装飾品と宝剣を入れ、軽い装飾品と魔道具、小さな袋に詰めた宝石を上に乗せる。
明日の準備が終わり、疲れも抜けきっていなかった俺は、柔らかいベッドで、財宝の入っていた袋を抱いて寝るのだった。
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