目覚ノ玖 weapon
翌日、私はとある男に呼び出されて開発室に来ていた。
なにやら武器の事で話があるらしい。
「いやぁはじめましてだね、Ms.L。私はデベロッパーという者だ。早速だけどあの刀についてなんだが……」
「ああ、なんだ? 呼び出したという事はそれなりになにかあるんだろう?」
「そうだね。まずはこれを見てほしい」
そう言われて開かれた細長いケースを開けると中から二振りの刀が出てきた。
「昨日の刀、か? これがどうした?」
「まぁまぁ持ってみてくれ。そうすれば分かるよ」
「ふむ……」
手にとってみる。いや、待てこれは……!
「昨日の刀とは何かが違うな。よく手に馴染む様な……改良か? それとも私に向けてのカスタムか?」
「ご明察! Ms.Lに合わせてカスタムしたんだよ。昨日のデータとドクトルのデータから、ね」
聞けばこの刀、K用にカスタムされていた昨日の刀をベースに色々弄くり回したそうだ。なんでも私とKがいくら似ているからといって太刀筋や構え方はまるで異なるが故に最適化したらしい。
「……と、いうことは昨日の手合わせは観察されていた、と」
「うーん、観察というよりは刀に残ったデータからの弾き出しだよ。私の作った武器にはデータ収集装置がついているからね」
「なるほど」
「是非この刀でMs.Kとやりあって欲しいものだ。頼めるかい?」
突然の申し出。このデベロッパーという男にはあまり義理はないがかといって断る理由もない。
「……いずれにせよKとは何かしらで戦うからな。その時にでも使わせて貰おう。この刀は気に入った」
「そうかそうか。いや、実にありがたい。これで新たな武器の開発も捗る」
私が思うにこの組織においてKと関わる者達は何かしら、どこかしら変な部分がある。変人共の集まりとでも言うべきか……
このデベロッパーというのはいきなりこんな事を言ってくるし、オペレーターとやらは化物じみた活動をするというし、ドクトルというのも私をここまで完璧に修復しているのだから。
これでは私らとどちらが化物かわからないではないか。
「ふふふ……」
「どうしたんだい? いきなり笑って?」
「いやなに、お前達もお前達だなぁ。とな」
そう言ってやると一瞬何かを考えた様な顔でデベロッパーも笑いながら答えてきた。
「ははは、君たちとはまた違った意味で人間の私達も化物なのかもしれないね」
「そうか。自覚はあるんだな」
「もちろんさ。ドクトルもオペレーターもそう思ってる筈だよ。良い意味で、ね」
「良い意味か。まぁそういう事なんだろうな。とりあえずこの武器はまた使わせてもらうとする」
「ああ、頼んだよ。管理番号を端末に転送しておく」
そんなやり取りをしつつ開発室を後にした。
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