Calling28 治療
「さぁて、コレは酷い状態だ」
組織研究室兼ドクトルの自室で何やらニヤニヤしながらドクトルは言う。
「それがその表情で言う言葉かよ……あいたたた」
「Ms.Kがここまでになるのは想像してなかったからね。治し甲斐もあるってものさ」
「はー、おもちゃみたいに言いやがって」
チクショー腹立つわ。まぁコイツに任せる以外方法ないんでどうしようもないのも事実か。
「それにしても本当に片腕をもっていかれるとはね。余程Lが強かったとみえるよ」
「当然だろ? 私ゃ頑張ってLに本能喰わせたんだ、それくらいやってくれなきゃ困るってもんさ。あー痛っってぇぇ! その薬やめろよー、結構染みるんだぜ……」
「擦過傷や裂傷にはこれが一番だからね。腕はどうする? バイオ加工の義手でもつけるかい?」
「うーん、融着結合するタイプの一番シンプルなのをくれ。後はリジェネレート待つわ」
腕や足の一本くらい暫く待ってりゃ生えてくる。それが私だ。義手を着けるのは酒飲むためと生活のため~。
「oh……私の自信作もMs.Kの前じゃあただのツナギにしかならないとは」
「そのツナギが大事なんだよ、ドクトル。他の自信作はLに使ってやってくれ。ヤツの方が怪我は酷いんでな」
「了解。それにしてもあの研究所は
「まぁ、ナノマシンを人工血液に仕込んでそれを本能の覚醒前に元の血液とごっそり入れ替える、なんてのはなぁ」
「……失敗率の方が高いと思うがねえ」
ん、ちょっと聞き捨てならんな。
「おいドクトル、失敗なんて言うな。アイツらは……」
「ああ、すまない。人間の私が言うべきではなかったね」
「お前じゃなきゃ首が飛んでたかもしれんぞ?」
「……重ねて謝るよ」
まぁ、ドクトルもこのあたり分かってるから良い。そうでなきゃこんな変態野郎とは付き合ってられん。
「後は薬の出来だって最悪だ。これじゃあ一昔前の麻薬の方がよっぽどマシだね」
「一昔前ってロガラ麻薬の事か? アイツよりもヤベェと?」
「そうだよ。あの研究所、表向きは製薬もやってたみたいだけどそれの副産物とロガラを混合させた最低の粗悪品を作ってたんだ」
「うわぁ……よくそんなモンに耐えてたな、Lは」
「ひとえに彼女が化物だったからだろうね。それに依存性も強かったようだけどMs.KがLの本能を呼び戻したお陰かバイタルに禁断症状の徴候は一切ないよ」
回復カプセルに入ったLの顔を見る。苦しそうな表情は無く、普通に眠っているようだ。私と同じく左腕と、それからオマケで右足が無くなってるがな。
「本能は何よりの麻薬みたいなモンだからな。ああ、Lにリジェネレートの気配はあんのか?」
「うーん、何とも言えないね。このまま何もないようなら私の最高傑作をプレゼントしようかと思っているよ。はい、処置終わり。義手は今のところ激しく動かさない様にね」
「ありがとさん。お前のことだから良いモン作ってるとは思うが……変なモン着けるなよ。あいたたた……よっ、と。んじゃデベロッパーのとこいってくるわ。色々礼も言わにゃならんしな」
さてLはドクトルに任せて行くとしよう。
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