Calling29 謝礼

 さてさて、デベロッパーは確か開発室に居た筈だ。そこへ向かうとしようか。

 それにしたって左腕が痛む。千切れたからそりゃそうなんだろうが変な感じだぜ。名誉の負傷とでもしとくかな。いや、なんか違うか? ……何でもいいや。

 っと、着いた着いた。シュインとドアの開く音~。

「おーいデベロッパー、私だー」

「おお、Ms.K。調子はどうだい?」

「まあボチボチってとこだな。それよりヴェインへの武器提供、感謝するぜ」

「今更に何を。Ms.Kらしくないね」

「たまにはな。ヴェイン単騎、しかもブレードだけじゃあ研究所は落とせなかっただろうし」

「はは、でもいいテストデータが採れたよ」

 実はLと戦う前日、出来るんならヴェインに研究を陥落させるように頼んどいた。あの研究所はぶっ潰しとかないと気が済まなかったしな。

 どうせ私らの戦いだって研究所は邪魔してきた筈でカイトとオペレーターが幾ら粘っても限界ってモンがある。だから研究所ごとぶっ飛ばしでしまえって話だ。簡単だろ?

「ヴェインが言ってたよ、『無茶振りを……』ってさ」

「だろうなぁ」

「『私に回ってきた仕事は暫くKに押し付ける』とも言ってたね」

「ええー! マジか……」

 うーんしまった、これは断るに断れない。流石にポーカーのツケもあるとなると余計に、だ。

「あーあ、やっぱ後から私が直接行くべきだったかなぁ」

「そりゃ無理だろうよ、その腕と怪我じゃ」

「だよなぁ」

 分かっちゃいる、これしかなかったと分かっちゃいるが悔やまれる。そう頭を抱えていると……

――シュイン

 おうおう、くだんのでっかいのが入ってきた、入ってきた。

「すみません、武器の調整を……って貴女が何故ここに。回復カプセルに入ってるんじゃないんですか? それにお悩みのようですが」

「あんな狭っ苦しいモン入りたかないわ。悩み事は仕事のだよ、仕事。ヴェイン、お前さん、私に仕事押し付けるつもりだろ」

「なっ、何故それを……はっ、まさかデベロッパーさん、話したんですか?」

「ああ、ついうっかりとね」

「それとなくやるつもりだったのに……」

「それとなく、の方が余計にタチ悪いわ! あーもーどうすんだよ」

「仕方ない事だろうよ。そんなに全てが上手くいかないものさ。何事もね。私も新開発の鋼糸のデータは採り損ねたし」

 くっそー、デベロッパーめ、それっぽい事言いやがって。

 まぁとりあえずデベロッパーへの礼は終わった。後はオペレーターとカイトのトコ行って土産話するだけだ。ヴェインに付いてくるか聞いたが武器の調整がしたいってんでここに残るらしい。


「さあさあ、お次は楽しい楽しいカイトとの時間だ。うへへ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る