BATTLE3

「私はこの世に生まれてから暫く、完成された存在だと思っていた!」

「まぁ、自覚してたならそうだろうな」

「だが私は不完全だった! それが証拠に見てみろ、この身体を!」

 Lがスーツを開く。確かに前に見たと同じく傷だらけだ。

「でもお前を超えるという使命があった! だから受け入れた! 研究所の期待に応えようとした!」

 まぁ、最初からそう刷り込まれたらそうなるか。

「だがしかし! 私の失敗作……いやアイツらがそう勝手に呼んでいる者達の存在を、境遇を知った時、私は、私は……!」

「私は、どうしたんだよ?」

「分からないのか!? 激しい怒りにとらわれたんだ! 研究所に復讐しようとまで考えた! だが何故か……何故か分からないがアイツらには歯向かえなかった……っ!」

「歯向かうどころか従順だろ、お前」

「それが分からない! 今だってそうだ、こんな話をしている自分を変だと思う! アイツらの言葉に従うならこんな事はしていないのに何故だ!」

――ドガンッ!

 Lが床を殴る。もちろんヒビはできるがいかんせん弱い。まだ弱い。

「それはな、Lよ、お前が本能を取り戻しつつあるからだ」

「本能だと?」

「今まで研究所の連中に歯向かえなかったのは薬と装置のせいだぞ? そりゃお前に気付かれん様に奴らは細工してたけどな」


「は?」


「……ホントに何も知らないんだな、お前」


 そこから私の話が始まった。実の所色々とオペレーターに調べさせていた、いやアイツが先に調べていたのだ。

 Lに施された装置、薬、それらがLから本能を奪い、反抗を許さず、従順にさせるという余りに化物を舐め腐った所業。

 それらをLに話した。まだ語れる事はある。だが……


「ま、そういうこった。どうだ? 少しはスッキリしたか?」

「……」

 押し黙るL。これ以上は話しても意味がない。この事実の先にLがどんな判断を下すのかはL次第だ。


「……私は生まれてからすぐに本能を奪われていたのか?」

 Lが確認するように質問してくる。

 答えるべきだろう。

「ああ、奴らの装置、正確にはお前の血液の中に仕込まれたナノマシンで抑制してたらしい。だから生まれるより前に奪われてたって方が正しいな」

「じゃあ薬は……」

「ナノマシンで抑えられなくなったお前の本能……つまり失敗作に関する怒りを鎮める為だろうな。もっとも薬には他に色々あるらしい」

「他、という事はまさか失敗作達に」

「失敗作達は薬に耐えられなかったのさ。いや、耐えられなかったんじゃない、研究所の奴らの都合に合わなかったんだ」

 そう、元々は薬だけで失敗作達から本能を奪っていたが、それでは失敗作が持たなかった、だからナノマシンを仕込んだ。

 ナノマシンには適合率があったらしい。それに適合出来なかったのも失敗作達の一部だ。

 つまり、薬に耐えられなかった失敗作、ナノマシンに適合出来なかった失敗作、様々な失敗作の先にLはいる。

 それも伝えた。

「そんな……じゃあ私は幾多のの屍の上に……いや玩具に、慰み者にされたの上に立って……」

「お前が調べられた情報にはそこまでは載ってなかったんだな」

「あ、ああ……そんな……」

 膝から崩れ落ちるL。

 そうもなるだろう。

 

 いくら別個体とはいえ自らと同じ容姿、同じ目的で生まれ落ちた存在がそんな風にされていたのだとしたら。


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