STAGE4 真相への序曲

『うーん……全然ダメですね。上手くいかない……』

「まあ仕方ないって。カイトはよくやってるよ」

「これだけ古いですからね。それにさっきから通信の調子も悪いですし」

 大分と上まで来て暫く、カイトから少しノイズの混じった通信が入る。上に行けば行くほどノイズが酷い。

『それも含めてなんとかしないとなんですが……うーん』

「……! ちょっと速度落とせ。あの扉の向こう、怪しいぞ」

「? ……はっ、言われてみればちょっと雰囲気違いますね」

『その扉に近づく程、ノイズが……うわっ、映像切れた!』

「てことは多分入ったら通信は使えなくなるだろうな。よし、カイトにはちょっと悪いが二人だけで行かせて貰うぜ」

『はーい。ご健闘を!』

――ザッ……

――ギィィィ……

「さて、どこにいやがる。さっさと出てきてくれたら良いんだけどな」

「今の所、貴女以外から放たれる殺気の類は無いようですが……」

 通信は切れたが映像の記録はこっちのバイザーで撮れてるんで後でカイトに見せてやる為にも丁寧にやっておく。今度はマジで特殊だからな。

 なんかもやみたいなのがかかっててよく見えん。雰囲気ったら雰囲気だが……

「妙だ。おいヴェイン……ヴェイン!?」

 ヴェインから返事が無ぇ!? むっ、殺気!?

――ゴォン!

「何のつもりだヴェイン? 今は手合わせしてる場合じゃねえぞ」

「……」

――ブンッッ!

「一体どうした? しっかりしろよ……ッ!」

 返事しねえ上に私に切りかかってくる……つまり単純にいえば操作されてる訳だ。誰がそんな事を?

「決まってるか……『L』とかいうの、出てこいよ! こんなの面白くも何ともないぜ! おっと、危ねえ。ヴェインちょっと我慢してくれよ……」

――バシィィィン!

 横っ腹に思いっきり蹴りを入れる。大柄なヴェインが吹っ飛ぶくらいのをな。これくらいじゃヴェインは死なん。

「よ、っと。ヴェイン、特別サービスだぞ。思いっきり吸い込め。『傾城魅了クイーンズテンプテイト』」

 意識飛びかけのヴェインに脇の匂いを嗅がせてやる。洗脳には洗脳で対抗だ。仮に「L」のものだとして私のとどっちが上かな?

「うぐ……はっ! 私は一体……?」

「戻ってきたトコ悪いが静かにしてくれ。近くに居る」

 よしヴェインは戻った。だがこっからが問題だ。私の直感が正しけりゃ多分だが何か仕掛けてくる。このやり口を見る限りでは……

――カランカラン、パシュー

「げぇ! 催眠グレネードか! せこい真似しやがるな、ヴェインもう一発耐えてくれ!」

「え、ちょっと何が」

――ドドンッ!

 説明する暇は無かったがこのガスがヤバいのは一瞬で分かったんでヴェインを逃がすのに蹴って弾いて城外まで出て貰った。

「チッ……私もフラフラしてきたぜ」

 あーこりゃいかん。飲みすぎて気持ちよくなってきた時の感覚のアレだ。これは眠い。

「K、命令により貴女を拘束します」

「ハッ、随分デカい口を、と言いたいがこれじゃあ拘束される他ねぇな。好きにしろよ。ああそうだ、お迎えには柔らかいベッドが欲しい……ね」

「……」

 だんまりを決め込みやがってコイツは。


 まぁいい、どうせ研究所行きだろう。

 着いたら着いたでその時だ。どうせ奴らに私を殺せはしない。


 眼の前の「L」が本気になれば話は別だろうが、な。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る